【SANNOエグゼクティブマガジン】市場調査は組織強化の一環~最近の傾向・ご支援から見えること

重要な示唆を与えてくれる顧客の大切さ

ある会社での営業部長職セミナーでのことです。収益には大きく貢献しないが重要な示唆を与えてくれる顧客、という意味の「ティーチャーカスタマー」について議論しようと持ちかけました。ところが、全員から「当社にはそんな顧客は存在しない」という答えが返ってきました。たまたま経営陣が同席していたので、本当にそうですか?と尋ねたところ、「いや、そんなことはない・・・」と口篭っていました。ビジネスは市場から学ぶのが基本。自社の営業リーダーは確かに売るのは得意だが顧客や市場から学ぶ姿勢がないことが判り、愕然としたそうです。

調査では"見たいもの"を見ようとしてはいけない

事業の先行きを検討する初期段階では、市場調査が有力な判断材料として定着化しています。不確実なトレンドの可視化、課題の絞込み、新しい動向の把握などが調査本来の目的ですが、予定調和的な調査が行われることも少なくないようです。特に不特定多数を対象にした調査では、質問の仕方によって回答傾向が大きく変わるので、恣意性が入り込みやすくなります。コンセンサスは大事ですが、市場はそもそも変数の集合体です。思った通りの結果が出たと喜んでいる担当者を目にすると、この会社大丈夫かな?と不安になります。

自前調査の旨み

大きな会社になればなるほど、社員は外の動きや自らの立ち位置に鈍感になります。自社の論理が世の中全般に通用すると思い始めたら、立派な大企業病。対策が必要です。市場調査の過程には、情報収集から人脈形成に至るまで、個人や組織を強くする“旨み”の成分がふんだんに盛り込まれています。調査を外部機関やマーケティング部門任せにするのはもったいない話です。管理職でも一般社員でも構わない、前線の社員が自らの力で行うべきです。

訊くことだけの調査では失敗する

調査の基本は訊くことです。ただ、知らなければ何でも人に聞けば良い、というのも安易な考え方です。情報のやり取りはギブ・アンド・ギブンが鉄則。こちらから提供する情報がないと、相手も胸襟を開いてくれません。まずは書籍やネットを通じて、その分野の基礎情報を洗いざらい調べます。本格的に調べたいのであれば、最低1メートル分ぐらいの高さになる資料に目を通す事になるはずです。最初にあげた例のように、顧客の真意や競合他社の動きは、営業担当でも把握しきれていないことが多いです。地道に話し合いの接点を増やし、点と点を結び付けることが重要です。その後の繰り返しの議論によって、靄(もや)が晴れるように課題が明確になります。