【SANNOエグゼクティブマガジン】知らず知らずに陥る原因の取り違え~最近の傾向・ご支援から見えること

部分最適思考

業績がなかなか伸びないとの課題をお持ちの企業様に対し、事業計画の策定支援、ならびに、現場のオペレーション改善支援をしています。

企業様へおうかがいする際、まず、経営情報関連の資料を確認させていただくとともに、役員や部長層など、組織の上層部の方々へ状況をヒアリングさせていただいています。そこで共通して感じることは、現状把握が疎かになっているということです。
人が育っていない、あるいは社員の能力が足りないなど、定性的な状況は把握されているのですが、数値上のこと、たとえば、製造コストに対する認識が実際とやや異なることが見られます。

また、部門長クラスの皆様は部分最適(部門最適)の話に限定することが多い、ということも、共通して感じることです。「改善はしている」「できている」と仰るものの、結果的に決算書の数値に結びついていないことが多く、全社的な視点から見ると限定的と言わざるを得ません。

「問題の原因は何でしょうか︖」とお聞きすると、経営環境が悪化、新規参入業者が増加と仰るもののよくよく調べていくと、その原因が会社内部の問題であるということもあります。原因を取り間違えていらっしゃるのです。正確に原因を追究できる人材の育成が必要になります。

このようなことから、まずは、「現状をきっちりと把握すること」が大切だと私は思っています。 特に経営層、部門長自らもっと経営環境や自社の状況を分析し、さらには現場に出向き、現場の問題を把握することで意外と分かったつもりでいたものが分かっていなかったことに気づき始めるのです。
特に、決算書を分析することで気づくことが多いのです。競合企業と比較し、悪いと思っていた項目が良かったり、良いと思ってた項目が、実は悪かったりということがあるのです。

次に、「目標自体が部分最適に陥っていないかを見直すこと」も大切です。
トレードオフの関係があらゆるところにあります。

例えば、売上を上げようとする場面で、ある1社に対して偏って売ってしまったとき、販売先の与信管理などを考慮しないままでいると危なくなります。つまり、その会社が倒産したときに自社まで倒産する危険性があるからです。売上だけに目が向いてしまいその他の側面は見ていない、というケースです。

他には、材料の調達活動で、大量調達すると調達コストは下げることができるかもしれませんが、倉庫保管費がかかりすぎたりするわけです。つまり、調達コストを下げることだけを意識すると保管費が上がってしまうのです。
だからこそ、組織全体の状況を把握したうえで、自部門・自部署の目標を立てていかないと結果的には部下がかわいそうな立場に置かれてしまうことがあります。

さらに、「本来の目的を見失っている。部門本来の機能を失っていること」もよく見られます。 ある部門の業務が、投資するコストに見合ったものかどうか、曖昧なところが多いことがあります。部門や部署なりの本来の機能をきちんと再認識したうえで、その機能に合ったコスト(例えば人員配置など)かどうかを見直す必要もあります。これまでは適していたものの、時代や環境が変わって適さなくなってしまったということもあるものです。