【SANNOエグゼクティブマガジン】新規事業立ち上げ時の留意事項~最近の傾向・ご支援から見えること

既成の枠の外に置くこと

最近、「新規事業立案のお手伝い」についてのお問い合わせが増えています。新規事業というのは、とても魅力的な言葉です。他社の事例であっても、iPhoneや Wiiなどの成功事例を目の当たりにすれば、少なからぬインスピレーションを受ける訳です。挑戦心のある人材にとって、新規事業部はいまだに憧れの職場です。また、ある大手のコンサルティング会社では、新卒社員がやってみたい仕事の第1位は新規事業開発支援だそうです。

一方で、新規事業は成功が難しく、成功確率が千三つと言われたりもします。はじめてはみたものの最初の計画どおりに売上が伸びない、どんどん資金が投入されて赤字を垂れ流している、開始して2か月なのに予算を縮小する話が聞かれ始めた、等々。新規事業が壁に当たる例は、枚挙にいとまがありません。

大企業で新規事業が失敗する要因は、マーケット、リソース、マネジメントに分けて語られます。つまり、思ったほど売れない(マーケット)、計画どおりに進まず、PDCAが回らなくなる(マネジメント)、本社からは失敗事例と映り、ヒトやカネの供給がストップされる(リソース)、という流れです。ただ、マーケットは変数の集合体なので、試行錯誤を繰り返していればいつか花開くことがあり、花が開けばPDCAは必然的に回り始めます。ヒトもそれなりに優秀な人が選ばれているでしょう。

問題は、送り出す本社の側に、事業を立ち上げた経験のある人がいないということです。だから、短期的なモノサシで新規事業を捉えたり、形式主義を押しつけたり、中途半端に口を出したりと、本来やってはいけないことをやる訳です。

既存のリソースが活用できるとはいえ、新規事業は意識の上において、起業となんら変わることはありません。起業家には、数字やロジックだけでは説明がつかない感覚的なものが必要です。周りの人の反対を押し切って突き進む強い意志も要ります。一種の鈍感力のようなものも身につけていないとダメかも知れません。これらは、親会社の庇護下で身につくものではなく、退路を絶たれ、市場の中でもがき苦しむことで磨かれるものです。重要なのは、推進者を既成の枠の外に置くことです。

一方で、彼らにはやりがいに値するビジョンが必要です。ポスト、インセンティブ、独立など、手法は様々ですが、とにかくワクワクする目標です。その代わり、失敗した場合は戻る場所はない。その覚悟の人が手を挙げるのです。戦略的に異端児を創り上げることで、攻めの体質に変えてみてはいかがでしょうか。