【事例紹介】株式会社サンデーにおける⼈事制度と連動した通信研修の活⽤

はじめに

~効果を⾼めるための仕組みづくりや運⽤⾯の⼯夫~

組織が発展していくためには、個々の総和を超えて、組織の成⻑に変換し続ける⼈材育成が求められます。その中で、通信研修の活⽤が⾒直されています。

そこで今回は、株式会社サンデー⼈事総務部教育課リーダーの⼯藤純⼀様に、⼈事制度と連動した通信研修の活⽤事例についてお話を伺いました。
株式会社サンデー ⼈事総務部教育課 リーダー ⼯藤 純⼀ ⽒
  • 本編は2011年1⽉21⽇の学校法⼈産業能率⼤学主催の「事例から学ぶ“学び成⻑する組織づくりと通信研修の効果的な活⽤”」にて講演いただいた内容を編集したものです。

サンデーにおける教育体系の基本的な考え⽅

まずは当社の教育体系について紹介させていただきます。

基本的な理念は“教育は最⼤の福祉なり”という考え⽅です。
「仕事が⼈をつくるのか、⼈が仕事をつくるのか」、当社ではその関係を強く意識しながら、若い⼈材が第⼀線で活躍するための教育システムを構築。階層別の教育や勉強会をはじめとする各種研修、⾃⼰啓発⽀援などを⾏っています。

今回、お話の中⼼となる通信研修についても、当然そうした考え⽅を基本としています。

昇格制度と連動した通信研修

当社では通信研修を⼈事制度と連動して運⽤することで、⾃ら学び成⻑する⾃⼰啓発の風⼟づくりや、実践に役⽴つ育成を⾏っています。

はじめに当社の昇格の仕組み、職能資格制度との連動について説明させていただきます。
こちらの制度は2008年度に改定が⾏われ、それまでの全9等級から全12等級に区分を変更。現在は1から4等級が⼀般層、5から6等級が管理監督層、7から10等級が幹部層、11と12等級が経営層となっています。それに伴い、新卒社員が7等級に到達するまでの最短年令を38歳から30歳へ短縮しました。旧制度では、現在の等級を何年か経験しなければ次の等級を受験できない制度になっていましたが、経験年数の要件をなくすことで毎年でも昇格試験を受けられるようになり、成果を上げ挑戦する社員がどんどん昇格する制度となっております。

そのほか「資格等級が重点の賃⾦体系」「同⼀資格内での賃⾦が上がり続けない」「下位等級との賃⾦逆転なし」といった賃⾦制度も併せて導⼊しています。

上記の表は昇格のために必要な通信研修と公的資格の⼀覧です。

例えば、4等級から5等級に昇格したいときは、階層別通信研修の「初級管理者コース」が必修となり、さらに指定の通信研修を修了するか公的資格を取得する必要があるわけです。
また当社では、AからEの5段階で社員の評価を⾏っています。DおよびE評価の者は受験資格が得られない。つまり、昇格試験を受けるためには、現階層で⼀定の評価を得た上で、規定の通信研修を修了しなければならないという制度になっています。

集合研修と連動した通信研修

続きまして、通信研修と集合研修の連動について説明させていただきます。
当社では、「5等級から6等級」と「6等級から7等級」の昇格に関して1年間の研修期間を設けております。この期間は通信研修を通じて学びながら集合研修でより効果的に理解していくためのものです。

具体的な流れとしては、まず前項で紹介した通信研修の修了等により受験資格を得た者が筆記と⾯接による昇格試験を受ける。そこで合格することで、ようやく昇格候補者となるわけです。昇格候補者はその翌年に、「マーケティング戦略」の集合研修を受けることになりますが、それに先⽴ち通信研修の「マーケティング戦略コース」を受講してもらいます。集合研修開始時点で通信研修を修了していなくても構いませんが、テキストを熟読した状態で参加するのが条件となっています。

1年間の研修期間には、集合研修への参加と通信研修修了のほかにレポート提出を義務付けています。内容は集合研修の成果レポート(2回)と課題図書(5冊)のレポートです。そうして1年間の研修およびレポート提出を終え、成果発表と最終⾯接を経て最終合格者が翌年に昇格する制度です。

通信研修で学び、集合研修でより深く理解し、成果(実践)レポートを提出する、というPDCAサイクルを回すことで、知識を知恵とすることを可能としています。

費⽤援助の仕組みと、受講者数の推移について

当社では、従業員の⾃⼰啓発および資格取得といった能⼒開発の促進を目的に、その費⽤を援助する⾃⼰啓発制度を導⼊しています。

通信研修については、修了者に対して受講料の半額を援助。資格の取得は基本的に全額援助とし、不合格の場合のみ2割を⾃⼰負担としています。この制度は2008年度に改定されましたが、それ以前は通信研修の場合、優秀修了で全額の援助、通常修了で半額、未修了で援助なし。資格取得は、合否にかかわらず、全額会社で援助していました。こうした制度変更により通信研修の受講者数の減少が⼼配されたのですが、実際は2008年度の受講者は前年より増加し、2009年度もその⽔準を維持することができました。

⼈事制度と連動して通信研修を活⽤する、主に昇格と連動した通信研修の活⽤により、⾃ら進んで学ぶという風⼟が根付いております。

企業の“想い”をより伝える「通信研修パンフレット」の改訂

続いて、2011年度「通信研修パンフレット」についてご紹介します。
こちらは、全従業員に当社が求めるものがより分かりやすく、正しく伝わるよう、昨年のものから⼤きく3つの変更を加えています。

変更点1:「求める⼈材像」の明記

まず、目指すべき企業の姿が何であるのかを掲載しました。

企業理念である「忠恕(ちゅうじょ)」とは、「忠」の⼀字で内なる真⼼に背かないことを、「恕」の⼀字で真⼼による他⼈への思いやりを意味しており、創業当時からの企業理念となります。

パンフレットでは「東北で最も質の⾼いホームセンターとして活躍する」ために、求められる⼈材像を明記しました。具体的には以下の5つです。

変更点2:必要なスキルを年次・職位・職種別に明記

では、企業側が求める⼈材となるためには、どういったスキルを⾝につける必要があるのか。
パンフレットでは、まず「4つのスキル」として、その点についてしっかりと⾔及しました。

具体的には、対⼈関係に関する「ヒューマンスキル」、複雑な問題に対応する「コンセプチュアルスキル」、実務に関する「テクニカルスキル」の3つに、それらを総合的に学習し、かつ求められる役割に主体的に取り組むための「各スキル総合/役割認識」を加えた4つになります。
  1. 各スキル総合 役割認識→総合能⼒の強化
    目標達成、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキル、テクニカルスキルの総合能⼒など
  2. ヒューマンスキル→伝える⼒、⼈を動かす⼒
    マネジメント、リーダーシップ、コミュニケーション、コーチング、プレゼンテーションなど
  3. コンセプチュアルスキル→考える⼒、実⾏する⼒
    論理思考⼒、問題解決⼒、洞察⼒、創造⼒、状況判断能⼒、数字など
  4. テクニカルスキル→業務知識
    商品知識、業務知識、販売能⼒、資格取得、パソコン、教養など
その上で各スキルを修得するためのコース例を紹介しています。
例えば「ヒューマンスキル」の場合は、マネジメントやリーダーシップ、コミュニケーション、コーチング、プレゼンテーションに関する⼒が必要であり、その修得のためには「⼈材マネジメント・エッセンスコース」「スポーツに学ぶチームマネジメントコース」「幕末リーダーに学ぶリーダーシップコース」「コーチング⼊門コース」「実践リーダーシップコース」などを履修する内容となり、それを⼀覧にしたものが下記の表です。
表では縦軸が年次になっていますが、それだけではイメージしづらいので隣に具体的な職位を表記。また横軸には前述の「4つのスキル」を表記しました。

この表の利点は、約130のコースの中から⾃分に合ったものが⾒つけやすいということ。
多くの中から目的のコースを選ぶというのは、なかなかに⾯倒な作業であり、これまでにも「思っていたコースと違った」「内容が⾃分に合わなかった」「簡単すぎてつまらなかった」といった声がありました。そうしたトラブルを回避するための取り組みということになります。

変更点3:昇格試験に必要な通信研修と公的資格の⼀覧を掲載

昇格試験受験に必要な通信研修と公的資格については、これまでその確認のためにファイルを⾒たり、パソコンを⾒たりする必要がありました。そうした⼿間の軽減のため、パンフレット内に盛り込んでいます。

(2011年1⽉21⽇公開、所属・肩書きは公開当時)