【事例紹介】アフラックの階層別研修を軸にした中堅社員育成の取り組み

はじめに

「⽣きるための保険」のリーディングカンパニーとして、時代の変化を先取りした商品・サービスを創造するアフラック様。
2006年の⼈事制度改⾰により、階層別研修を軸にした中堅社員の育成に取り組むべく、体系的な⼈材育成プログラムを構築されています。
今回はその取り組みについて、研修制度の中核をなす⼈材サポート部⼈材開発課 課⻑松本仁美様にお話を伺いました。

※本編は2009年2⽉10⽇の学校法⼈産業能率⼤学主催「アニキ・アネゴを組織で育てるフォーラム」にて講演いただいた内容を編集したものです。

研修の狙いと中堅社員層の位置づけ

本⽇は、アフラックの中堅社員層の育成と狙い、さらには今後の課題について、順番にお話ししたいと思います。

当社における中堅社員研修の狙いは2つあります。
1つは中堅社員の中で薄らいでいる『役割意識』を認識させる機会を持たせることです。後輩が配属されれば、チーム全体で⾯倒を⾒て育てていく。いわゆるプレーヤーとして終わるのではなく、しっかりとリーダーシップを発揮する。管理職を補佐する⽴場になったら部署全体の業務を⾒る。
そういったチーム内での“役割”をきちんと意識をしてもらうことによって、個々の⼒を発揮してもらいたいと思っています。

そして、もう1つは⾃分のキャリアについて考える機会を提供することです。⽇々忙しく仕事をしていると、⾃分⾃⾝のキャリアについて真剣に考えるタイミングがありません。そこで昇格時などに、いったん⽴ち⽌まって⾃⾝のキャリアについてしっかりと考えてもらおうというわけです。

次に当社の中堅社員層の位置づけについてご紹介します。

まず⼊社3年目までの若⼿社員をJもしくはS4グレードと設定。次に営業主任/副主任クラスのS3、⽀社⻑代理/主任クラスのS2、⽀社次⻑/副⻑クラスのS1と続きます。

当社ではこのS3〜S1までを中堅社員と呼んでいます。
標準でいくと、新卒で⼊社をして3年間。その後約3年の実務経験を経てS2グレートとなるので、いわゆる若⼿の中堅層というと20代後半ぐらいになろうかと思います。

しかしこれはあくまでも目安であり、S3グレードになってから3年経てば誰でもS2になれるとか、S2を5年経験すればS1に上がれるということではありません。

研修に先⽴ち、グレードごとに職務定義を設定

研修にあたっては、まずそれぞれのグレードに職務定義を定めています。
それにより「このグレードの社員であれば、会社側はこんなことを期待している」ということを明確にしているのです。

各グレードの職務定義

S3(上〜中級実務担当者)

上~中級担当者として、チーム全体のスムーズな業務遂⾏に貢献する。
新⼊社員や初級担当者に対して、業務知識やノウハウを継承し育成する。
個⼈として通常の業務処理に加えて、管理職・上位担当者の重要課題をサポートする。

S2(ハイレベルな実務担当者であり、組織のNO.2に準じる⽴場)

課の目標達成のために担当チーム(領域)のマネジメントを担う。
担当チームの業務遂⾏レベルを⾼めるために業務知識やノウハウを継承し、⼈材を育成する。
個⼈としても、課内でも非常に難易度が⾼く、広い範囲の業務を常に担当する。

S1(将来の管理職候補たる組織のNO.2)

部・課の目標達成のために、管理職と同等の視点で組織マネジメントをサポートする。
課全体の競争⼒を⾼めていくために、管理職とともに⼈材育成の中⼼的役割を担う。
個⼈としても、課内でも非常に難易度が⾼く広い範囲の業務を常に担当する。

階層別研修の概要

中堅社員層に対する研修には「必修研修」「任意研修」「その他の研修」という3種類があります。

必修研修では、昇格者トレーニングと対象者トレーニングを⽤意し、それぞれのグレード昇格時期と、各グレードにいる期間のあるタイミングで研修を⾏うことで体系化しています。

昇格者トレーニングは、S2グレード、S1グレードに昇格したタイミングで実施します。S1およびS2の役割や求められる能⼒について、しっかりと認識してもらうことを目的としています。

本来は昇格直後の4⽉に⾏いたいのですが、対象社員が多いため、実施には毎年5〜7⽉にかけて実施をしているのが現状です。

また対象者トレーニングは各グレードの中間時期に実施。S1、S2は経験年数5年が目安になるので、昇格後3年目に研修を⾏っています。

研修の実施にあたっては、受講者に対して求められる職能要件と発揮してほしい能⼒を明確にした上でプログラムを組み⽴てています。
なおプログラムの内容については、外部の研修機関や教育機関にある程度はお任せしていますが、パッケージの研修では当社の状況や社員の環境、会社のビジョンなどを盛り込むことが難しい為、徹底的に話し合うことにより内容を⼤幅にカスタマイズしてもらっています。

また、本研修が⼈事の独りよがりな研修ではなく現場の声を適切に反映させた研修であることを受講者に理解してもらい、役割認識を強めていただくための⼯夫としてサンドイッチ⽅式を採⽤しています。
研修に先⽴ち、私たち⼈材開発部門の担当者が研修の目的や狙いを明確に伝え、また研修の最後には、研修で得られた成果を今後のアクションにどのようにつなげていくか、目標を明確化させます。

これは当社が⾏うほとんどの研修で実施しており、ときには先輩社員を呼んで「⾃分がそのグレードの時は、こういうことに気をつけていた」といった具体的な話をしてもらうこともあります。

研修後における現場との連携の必要性

各社員が職務・職能を意識すること、そしてその強化を図ることは階層別研修において最も重要な課題のひとつです。

そこで当社では、各⾃の職能が現場でどれだけ発揮されているかをきちんと⾒る機会として、年に1回職能要件に基づいた360度評価(ポジションアセスメント)を実施し、すべてのコメントを集約して、本⼈宛にフィードバックしています。

また研修の中⾝そのものではないのですが、確実に今後の課題となるのが現場への「ブリッジ」の確保です。

具体的には研修に際しての事前課題と、研修後の事後課題の提出をお願いしています。事前課題については、例えばS2を例に説明すると、まずは⾃分の「戦略的思考」や「実⾏⼒」を⾃⾝で振り返ります。
そして所属⻑や先輩、同僚などに「この部分はできています」「ここは⼯夫が必要ですね」などの意⾒をもらった上で研修に臨んでもらいます。

研修後は学んだスキルを活⽤した具体的な⾏動計画やアクションプランの提出を義務づけています。

また研修実施後、1~3カ⽉経ったところでの事後課題の実施を徹底しています。
研修は2⽇間ですが、その後の実効性をきちんと保つためにも、現場を巻き込んで習ったことを実⾏していかなければ意味がありません。

つまり研修を成果につなげるためには、上司を中⼼とした周りをどれだけ巻き込めるかが重要ということ。この部分こそ、研修を⾏う上での永遠の課題になると感じています。

必修研修を補完する任意研修とその他の研修

次に必修研修以外の研修についてご紹介します。

必修研修では、あくまでも最⼤公約数となる能⼒の修得を主眼としたものであるため、それができれば完璧なSグレード社員だとは⾔えません。

当然ながらそれ以外にもアフラックで仕事をしていく上で必要な能⼒というのは沢⼭あるわけです。そうした必修研修では網羅しきれない能⼒について、外部の教育機関にご協⼒をいただきながら実施しているのがオープンプログラムなのです。

基本的には2⽇間の研修で、外部講師を招いて実施するというスタイルを取っています。なお、異業種交流についてはご賛同をいただいている複数の会社様と共同で⾏っているため、社内で実施するオープンプログラムほどたくさんの社員に参加してもらうことができません。参加できるのは5~6名になってしまうのですが、毎回参加希望者が多く、競争率が非常に⾼いのが特徴になっています。

もうひとつ「その他の研修」として、ヒューマンアセスメントと後輩育成トレーニングというプログラムを⽤意しています。

アセスメントは、管理職予備軍ともいえるS2グレードが対象です。
マネジメントスキルの棚卸や管理職適性の⾒極めを目的とした研修であるため、S2から管理職候補としてのS1への昇格には、多少なりとも、このアセスメントの結果が影響します。

後輩育成のトレーニングは、今年初めてトライする企画です。
S2、S3の若⼿層をターゲットにつくられた研修で、組織の中核から後輩を育てる風⼟作りを目的にしています。

受講者による研修の評価と運⽤上の⼯夫

⼈材開発部門では、研修後に受講⽣の声と研修後の満⾜度についてのアンケートを実施しています。まず受講⽣の声としては、「他部門の同グレードの社員が何を考えながら仕事をしているのかがわかった」といったものを多く聞きます。

多少、派⽣的な要素ではありますが、普段知ることのできない他部門の社員が、どんな思いで仕事をして、どんなふうにお客様とつながっていくのかを知ってもらえるということは非常にうれしいものだと感じています。また研修の満⾜度については、必修研修において5段階評価で4.4という点数をもらっています。

運⽤上の⼯夫としては⽇程への配慮が挙げられます。

当社は全国に81の営業⽀社を持っており、業務の性格上、⽉末・⽉初が非常に忙しい。そこで⽉末・⽉初を除いた⽉・⽕、⽊・⾦という週末あるいは週明けに研修を設定し、地⽅からでも参加しやすいような配慮をしています。

研修制度における今後の課題

今後の課題として、⼈材開発部門では「継続性・定着化」「管理職の役割期待」「学び合う風⼟の醸成」の3つを挙げています。

■継続性・定着化…私たちは研修により社員に気づきを与えることはできます。その気づきを現場でどのように活かしてもらい、さらに定着させていくかは⼤きな問題です。現在、現場の意⾒も聞きながら様々な試みを⾏っていますが明確な答えはまだ出ていません。

■管理職の役割期待…研修はせいぜい1年のうち2⽇間程度のもので、⼤半は現場にいるわけです。現場での育成責任者である管理職、マネージャーが、どれだけ主体的に育成に関わってもらえるのか。またそのための意識づけをどのように⾏うのかが⼤きな課題になっています。

■学び合う風⼟の醸成…上から教えられるだけでなく、皆が互いに学び合うような風⼟づくりにもいて試⾏錯誤を続けています。部下に対して管理者ができること、または中堅社員が管理者に与える影響⼒、若⼿社員が組織に貢献するためにできることを考慮しながら、下位層からの改⾰に取り組んでいます。

以上、当社の取り組んでおります階層別研修についてご紹介をさせていただきました。

(2009年2⽉10⽇公開、所属・肩書きは公開当時)