【事例紹介】三井住友海上⽕災保険株式会社の「⼥性が活躍する会社」のしくみづくり 〜Part1〜

はじめに

2006年度から⼈事部内に「⼥性活躍推進チーム」を設置し、「⼥性が活躍する会社」の実現に向けて、環境整備や制度構築などを進めている三井住友海上⽕災株式会社。今回は⼈事部 能⼒開発チーム 課⻑代理であり「⼥性活躍推進チーム」メンバーとしても活躍されている⾦⼦朱実⽒に、ステップアップジョブ制度と⼥性活躍推進についてお話を伺いました。

※本編は2007年3⽉2⽇の産業能率⼤学主催『⼥性活躍推進フォーラム』にてご講演いただいた内容を編集したものです。
(ページの構成は、ご講演内容をpart1とpart2に分けさせていただきました。part1の続きはpart2をご覧ください。)

⾦⼦朱実⽒
三井住友海上⽕災保険株式会社 ⼈事部 能⼒開発チーム 課⻑代理

1980年⼤正海上⽕災保険株式会社(現:三井住友海上⽕災保険株式会社)に⼀般職(現業務職)として⼊社。営業、経理、事務インストラクターを経て、1995年営業部門で総合業務に従事。1996年業務職(現エリア総合職)に転換。2003年現在の⼈事部能⼒開発チームで主に総合職・エリア総合職の教育体系の検討、研修企画、運営に従事。
*プロフィールはインタビュー当時のものです。

国内外のネットワークで安⼼と安全をお届けする三井住友海上グループ

はじめに、当社の企業概要について簡単に説明いたします。

当社は、東京都中央区新川に本社があります。設⽴は、⼤正7年10⽉21⽇。ネットワークとして、⽇本国内には729の営業課⽀社、約5,900店の代理店網で皆様に最⾼⽔準の商品サービスを⾏っており、256の損害サービス拠点を持ち、約6,600名の損害サービス専門スタッフで安⼼と安全をお届けしています。

海外において、約36カ国、52の主要都市にネットワークを展開しています。当社の沿⾰は、ご承知の通り、2001年10⽉1⽇に、三井海上と住友海上が合併をして、三井住友海上として誕⽣いたしました。この際に、国内外のグループ会社も統合をしています。

(資料1)イベント資料P20 「三井住友グループの経営 (1)」のスライドより
当社のグループ経営の概要は上図(資料1)で掲げている5つ、三井住友海上の損害保険業務を中⼼とした、⽣命保険業務、リスク関連業務、⾦融サービス業務、海外業務といった形でのグローバルな展開をしています。

三井住友海上グループの経営 企業理念

当社は、世界のトップ⽔準の保険⾦融グループを目指して、
「保険・⾦融サ-ビス事業を通して世界に安⼼と安全をとどけ、豊かな社会づくりに貢献します。」
「最⾼の商品とサ-ビスを提供し、お客様の満⾜を実現します。」
「永続的な業績向上を目指し、株主の信頼と期待に応えます。」
の経営理念で活動を続けています。

⼈を⼤切に育てる「⼈財育成」と能⼒開発体系

当社の⼈財戦略は、『⼈を⼤切に育てる』ことをモットーとしており、敢えて『財』の字を⽤いています。⼈財育成の実現に向けて「社員に求める能⼒⾏動」「学び成⻑し続ける組織」「2006年度3つの重点取り組み課題」を推進しています。

2006年度の重点取り組み課題は、「役職者のマネジメント⽀援策の強化」「学習する組織風⼟の醸成」「組織内・組織間のコミュニケ-ション向上」の3つを挙げています。 その中の「学習する組織風⼟の醸成」は、各社員層に対する教育の充実を挙げており、ここに⼥性社員の教育という項目も含まれています。当社の研修体系をご参考までに下図(資料2)で紹介します。
(資料2)イベント資料P23 「社員研修・能⼒開発体系 (3)」の表

ステップアップジョブ制度(社員区分転換制度)と⼥性活躍推進の取り組み

「⼥性が活躍する会社」を目指す当社の取り組みとして、「ステップアップジョブ制度」があります。当社の社員区分は、総合職とエリア総合職、業務職の⼤きく3つの区分があります。

総合職とエリア総合職の違いは、転居転勤を伴うか伴わないかです。エリア総合職は、もちろん転勤はありますが転居も転勤も伴いません。業務職は⾔葉が悪いのですが、事務の仕事をする⼈を業務職と⾔っています。

その業務職からエリア総合職への転換制度があります。エリア総合職への転換審査を合格した業務職に、「転換審査に合格したから今⽇から総合職業務をしてください」「基幹業務を今⽇からやってください」と⾔ってもなかなかも難しいものです。

そこで転換制度に、審査に合格した業務職に対して1年間の研修配属期間を設けています。それがステップアップジョブ制度です。1年間の研修配属期間の業務職は、⼀般の業務職と区別するために、ステップアップジョブと呼んでいます。ステップアップジョブ期間には6つの⽀援策があります。

まず、「⼈事部による上司説明会の実施」。

これはステップアップジョブの上司⼀⼈ひとりと打ち合わせを⾏い、この制度の説明、1年間、どのように教育をしてもらうか。1年後、エリア総合職に転換をする際の姿、対象者をどこまで育てるかなどを、上司と⼈事部とで約2時間かけて打ち合わせを⾏っています。

上司説明会の最後には、ステップアップジョブ本⼈にも⼊ってもらい、3者(上司、本⼈、⼈事部)の打ち合わせを⾏います。その中では、本⼈の希望、初めて⾏う基幹業務に対する不安等の話を聞き、最終的に⾃分が目指す姿を語ってもらいます。このような形で3者の合意の上で1年間の研修配属期間を進めていきます。

当社の場合は、⼤きな⼈事異動が4⽉1⽇にありますので、上司が確定した4⽉の上旬に、全国を⼈事部のメンバーで⼿分けをして回っています。この他「メンター制度の設置」と「年間10回以上の研修の開催」があります。これについては後ほど説明いたします。

次に、「⼈事部によるステップアップジョブ対象者との中間⾯接の実施」です。

1年間のちょうど中間の10⽉にステップアップジョブ対象者と⾯接を⾏います。そこでは彼⼥たちの育成状況、現在の不安、悩みといったことを確認します。その時点で、もし何か問題があるようであれば、即座に上司と本⼈と⼈事部で三者⾯談を⾏い、軌道修正を⾏います。

また、⾞を使⽤する営業と損害賠償部門のために「ペーパードライバー教習費⽤の補助」を設けています。これは、ペーパードライバーのために教習費⽤を、5万円を限度として実費を補助する制度です。最後に、営業と損害サービス部門というのは外出多いため、⼥性ならではの危険がどうしてもつきまとうことから「携帯防犯機器の配備」も⾏っています。

資料3 イベント資料P25「ステップアップジョブ期間⽀援」のスライドより

続きましてPart2では、「メンター制度」、「ステップアップ研修」、「⼥性活躍推進の仕組み」についてご紹介します。

(2007年3⽉2⽇公開、所属・肩書きは公開当時)