急速に台頭するインドの教育訓練機構

急速に台頭するインドの教育訓練機構

21世紀に入ってアジア新興国の発展は著しい。
グローバル経済の影響を受けているインドはこの2年間徐々に減速しているとはいえ、2012年にその名目GDPのランキングはすでに世界のベスト10入り、約1兆,824.83ドルに達した。アジアでは、中国、日本に次ぐ規模にまで拡大してきた。
情報技術(IT)産業の発展などにより「インドのGDPが2020年までに欧州に並ぶ」という予測が持て栄されている。(※1)

インドは1947年の独立後、頭脳立国の人材戦略を掲げ、現在国内15校あるインド工科大学(IIT、Indian Institute of Technology)を始めとして、理工・IT分野で世界にも有名な大学や大学院が出現することとなった。
論理的思考とグローバルな視野を徹底的に鍛え る独自の教育から、ITエリートが輩出している。近年、IITの卒業生のラージェーンドラ・パワール(Rajendra S. Pawar)とヴィジャイ・タダーニー(Vijay K. Thadani)が率いるNIITを筆頭に、インドの民間教育訓練機構の台頭は注目に値する。

    周 偉嘉(シュウ イカ) 学校法人産業能率大学 経営学部 教授

    NIIT(National Institute of Information Technologies)は、1981年にソリューション・ビジネスを主体とする民間教育訓練機構としてスタートした。2004年に教育訓練を行う「NIIT Limited」と、ソフトウェア開発を行う「NIIT Technologies Limited」という2つの事業体として多角化をはかる。
    「NIIT Technologies Limited」はインドにおける主力のビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)の事業を展開しており、現在インドでは第三番目のソフトウェア輸出のシェアを持っている。「NIIT Limited」はインドにおいて最大手、アジアと世界でも有数な教育訓練機構に成長してきた。

    その成長の原動力はグローバル化発展戦略、特にアジア・中国教育訓練市場での展開である。
    NIITは現在、世界40カ国以上にわたって約5,000 カ所に達する教育センター(Learning Center)とオンライン教室を持っている。修了者数は約500万人いる。中国にはおよそ187カ所の教育センターが23の省と市に分布している。また多くの大学や開発区などと共同で合弁の教育訓練機構を開設した。中国のIT教育訓練ブランド校ベスト10にもランキングされている。(※2)
    その他にインドのグローバルトレーニングAptech社と中国の名門北京大学の「青鳥」教育訓練機構が共同で運営している「北大青鳥・APTECH」プロジェクトは中国の教育訓練市場で最も有名な看板コースであり、すでに50万人の卒業生を出した。航空機の設計から物流システム、様々なソフトウェアの開発など、ビジネスの世界を席巻するInfosysも中国浙江省の嘉興に年間1万2千人以上規模の教育訓練機構を設立するなど、急速に広まっているソーシャルネットワーク、モバイルデバイス、クラウド・コンピューティングビジネスと言った世界を背景にインドの教育訓練機構の台頭は注目される。

    (※1)IMF - World Economic Outlook Databases (2013年4月版)による。
    (※2)例えば、中国地質大学や西安科学技術大学、広東海洋大学などの大学、また開発区として大連天地開発区(ソフトウェア開発ゾーン)、無錫高新区(ソフトウェア開発ゾーン)、蘇州新区(ソフトウェア開発ゾーン)などが挙げられる。

    プロフィール

    周 偉嘉(シュウ イカ) 学校法人産業能率大学 経営学部 教授

    【学歴/職務経歴】

    1983年華東師範大学卒業、1989年復旦大学大学院法学修士、1996年慶應義塾大学法学博士。
    華東師範大学・上海社会科学院ソ連東欧研究所(現在Centre for Russian Studies, East China Normal UniversityとInstitute of Eurasian Studiesという二つの研究機構として独立)の常勤研究員を歴任。また、帝京大学、日興証券等を経て、現職。
    平成1997年度