自動車技術のグローバル展開(3) ~内燃機関からモーター駆動への動向~

自動車メーカーのTVCM

このコラムが掲載される頃には、日産から2代目に当たる電気自動車「リーフ」が発売されています。市場投入に向けてTVCMでは矢沢永吉さんが「やっちゃえ日産」から「ぶっちぎれ 技術の日産」と自動運転技術と電気自動車技術を「ガラケーからスマホへの移行」と同じくらい革新的な世の中の変化であることを訴求しています。日産は電気自動車分野ではトヨタには先行しましたが、ハイブリッド分野では大きく水をあけられた状態でした。販売台数的にも国内では3位に甘んじる結果となっていますが、燃費不正問題で業績が急激に悪化した、三菱を傘下に加え、世界販売台数規模では「ルノー/日産/三菱グループ」が「フォルクスワーゲングループ」を抜いて1位になっています。

電気自動車の脅威

8月初旬にトヨタとマツダが電気自動車の開発に関して、資本提携を正式発表しました。トヨタは「マツダの株式5%余を500億円で取得」し、マツダは「トヨタの株式0.25%を約500億円」で取得するというものです。トヨタとマツダは2015年に「環境技術など幅広い分野で業務提携」しており、今回の提携は「電気自動車など共同開発」に向けて関係を強化させる目的です。トヨタは「プリウス」に代表されるハイブリッドカーの開発・市場拡販においては世界のどの自動車メーカーよりも先陣を切っており、「トヨタ・ハイブリッド・システム(THS)」の技術優位性は今でも誰にも真似のできない、素晴らしい技術力であると私は思っています。最近ではさらに「マルチステージTHSⅡ」を開発し、小さな排気量のエンジンとの組み合わせで欧州の高級車(メルセデスベンツ、BMWなど)と環境問題も含めて戦っていることは日本技術の誇りでもあります。

図表3:テスラ Roadstar;最初の電気自動車

しかし一方で「電気自動車の開発」は世界的に強化の動きがあり、代表的なのはアメリカ合衆国のシリコンバレーを拠点にイーロン・マスク氏によって設立された「テスラモーターズ(株)(以下 テスラ)」でしょう。2008年に最初に発売された「ロードスター」は、リアドライブ・スポーツカー仕様の電気自動車であり、車体のベースは「ロータス・カーズ」のものでした。当時は「スポーツカーであったこと」「航続距離が約350Km」であったことから、一般庶民には関心がないセグメントの車でした。

    その後、2009年には「モデルS」が発売され、大人5人が乗れるセダンタイプで家庭用コンセントからも充電可能でかつ、航続距離も飛躍的に向上させました。現在、モデルSはモーターとバッテリーの種類により7機種展開され、価格はまだ一般庶民には手が出せない高額ですが、自動運転技術なども搭載されています。
    2012年にはクロスオーバーSUVタイプの「テスラ・モデルX」、2016年には低価格タイプのセダンモデル「テスラ・モデル3」を発表しました。価格はオプションは別で約390万円となり、いよいよ電気自動車の一般家庭への普及が加速して来ていると感じざるを得ない出来事です。

    こうなってくると既存の「ガソリンまたはディーゼルエンジンが作れるから自動車が作れる」という自動車業界の概念はまったく通用しない世界になってきています。極論にはなりますが、家電メーカーだろうがタイヤメーカーだろうが、「高効率なモーターとバッテリーさえ調達できればクルマは作れる」世界がそこまで来ているのではないでしょうか。

      図表4:テスラ Model 3;安価な高性能電気自動車

      電気自動車(EV)へのアレルギー

      第1回のコラム」で述べたように、フランスとイギリスが2040年までに「内燃機関で走るクルマを禁止」という衝撃的なニュースが報じられた7月以降、世の中はにわかに電気自動車をはじめとする新エネルギー車への期待が高まってきています。
      しかし、その後両国とも規制の詳細や経過措置をどうするのかなど、具体的な実現方法に関してはコメントを発表していません。自動車専門家の多くは、政治的なパフォーマンスに過ぎないのではという懐疑的な意見も散見されます。そうは言っても一国のリーダーがはっきりと政策ポリシーを打ち出した以上、自動車産業に与える影響は大きいでしょうし、事実「テスラ Model3」や日産「新型リーフ」という商品が市場投入されてしまい、一般ユーザーに受け入れられる時代になって来ていることを鑑みれば、単に「EV(電気自動車)バブル」であるとも断言できないと思います。
      日産「リーフ」は2010年12月に発売となり、2015年12月には世界累計販売台数20万台を達成しています。また「テスラ モデルS」は2013年から日本での発売が開始されています。
      しかし、日本では電気自動車が売れない理由はなぜでしょうか。
      (1) 航続距離が短い:32%
      (2) 充電する場所が少ない:28%
      (3) 「走り」が楽しくなさそう:11%
      (4) 電気自動車の車種数が少ない:6%
      (5) 電気自動車のデザインが格好悪い:6%
      (6) 電気自動車が日本市場に合っていない:3%
      (7) その他:10%
      (出典:講談社 月間「ベストカー 9・26号」 有効回答数389人より)
      この結果を見ても分かるように2トップの合計60%は、現状の内燃機関エンジンと比較して実用面でのマイナス要素とされている部分であることが理解できます。「新型リーフ」では、リチウムイオン電池のサイズはそのままで、バッテリーの高密度化などで充電後の航続距離を30%以上伸ばし、400Km近辺になると言います。「テスラ モデル3」では220~310マイル(約235Km~約500Km)走れると記載されています。
      この航続距離が短いのか?十分であるのか?は個人のカーライフに依存すると思いますが、筆者が考える限り、地方での通勤距離(往復)や買い物、首都圏での1日の移動に関して言えば必要十分であるのではないでしょうか。

      卵が先か鶏が先か?(充電インフラの整備とバッテリー性能)

      そうは言っても「たまには家族で遠出したい」という要望に応えるには、「充電ステーション」のインフラ整備が必要です。日本国内はまだしも欧米での移動距離は長く、日本の比ではありません。既存の内燃機関のクルマ並みに「充電ステーション(現ガソリンスタンド)」の数の整備が必要ですし、家庭(マンションや借家、一軒家)での充電施設が安価に設置できることも、個人が電気自動車に乗り換える重要な要素になってきます。また一方で、企業が既存のガソリンスタンドのように「充電ステーション」がビジネスとして成立するか否かも重要な課題だと思います(儲からなければ誰もやらない)。飲食業界で客回転率を上げるように、充電ステーションでは1回のフル充電が、ガソリンを満タンにするくらいの時間でできることも必須条件のような気がします。

      図表5:急速充電ステーション;ガソリンスタンドより建築費は安くできる

      技術的に現在もっとも可能性の高いのは、「急速充電技術」であり、電池性能の向上も含めて、「400Km程度走ることができる60kWh分を、10分程度で充電できる技術」が、5年先くらいにできるような流れになって来ています。
      電気自動車の技術革新の速度とインフラ整備の速度。まさにこれは両輪が同時進行しない限り、CO2が排出されない自動車社会の実現は遠のいてしまうと思います。

        次回「第4回コラム」では、「自動運転の未来」に関して、お話しさせていただきたいと思っています。


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        各回 公開日
        三村 孝雄 プロフィール
        自動車技術のグローバル展開(1) ~環境問題と自動車の規制~ 2017年10月19日(木)
        自動車技術のグローバル展開(2) ~若者のクルマ離れと業界動向~ 2017年11月1日(水)
        自動車技術のグローバル展開(3) ~内燃機関からモーター駆動への動向~ 2017年11月24(金)

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