三つ目のグローバル共通言語~グローバル化はストレスフル?~(3)

1.感情表現には国柄がある

前回、抱く感情に人種間の差はないとは言いましたが、研究によって感情の表現自体には違いが認められるようです。同じ北東アジアでも日本に比べ中国・韓国は率直に喜怒哀楽を表すようです。一方東南アジアのタイは感情表現が控えめで、微笑みの国と称されるように、やりとり上穏やかな印象を受ける日本人が多いようです。
欧米も一様ではありません。ヨーロッパにおいてはゲルマン系が控えめ、ラテン系は率直とよく言われます。アメリカは一般的に感情表現が率直です。喜怒哀楽が分かりやすい分、伝統や形式、面子を重んじるイギリス人からすると「洗練されていない」と思われている節があります。
最近伸張著しいアラブ・インドは私からすると感情が読み取りにくいように思われます。声の抑揚や表情があまり変化しない印象を受けます。以前はアメリカ系 企業のアジア統括役員はアメリカ人が多かったのですが、近年そのポジションにインド系が就くことが多くなってきました。感情表現が率直な分、以前の方が上 司の意向が分かりやすかったという意見も外資系企業の社員から聞いたことがあります。
感情表現の程度の差にはいろいろな文化的背景があるのでしょうが、感情自体にも感情表現の程度にも良い悪いは存在しません。ただし人は自分と異なる点につ いては違和感を覚え、本能的に拒絶する傾向があります。感情表現が高い文化から見ると感情表現が低いと近づきにくいと感じるでしょうし、反対の場合は暑苦 しいと感じるかも知れません。このように感情表現一つとっても、相手を好ましいかどうかの主観的判断を無意識のうちに我々はしています。この認識があるこ とで、文化の違う相手へ配慮する意識が格段に高まります。

2.相手の感情に配慮しようとするとストレスが増す

外国人相手でなくとも世間とは至って気疲れするものです。社外では取引先やお客様に気を使い、社内でも上司や同僚に気を使うことが円満な人間関係には不可欠です。グローバル環境で文化の差まで念頭に入れると気遣いのストレスは何倍にも増えることでしょう。
そんなストレスを認識しないまま頑張り続けると、ある日、心が疲労骨折してしまいます。自分の気持ちにも敏感にならないと適切にストレスは発散できません。「どうしてこんなに気を使わないといけないのだろう」「たまには言いたいことを言いたいものだ」と心の中で愚痴を言うだけで終わっていませんか。ストレスは溜まる一方です。
ある意味、ストレス発散とは負の感情の開放です。あるいはマイナス感情からポジティブ感情への切り替えです。最近ではアンガーマネジメントという概念もよく聞きますが、不満や不公平感は怒りに通じます。人は怒りを抱くと攻撃的になります。ですから適切に扱わないと、とんでもないことになります。切れていいことは一つもありません。
グローバル化はストレスの肥大化を伴います。感情とストレスを上手にマネージする方法をいくつか持たないとグローバルな活躍はできないと理解しましょう。