北京を散策して感じた中国市場の変化 【第1回】

北京を散策して感じた中国市場の変化 【第1回】

第1回 味わい深い「后海」

中国に進出した日系企業での研修依頼があったおかげで、今年の夏に久しぶりに北京を散策することができました。

今回は、北京生まれ、北京育ちの私の目から見た地元のマーケット事情を今回(第1回)と次回(第2回)に分けてお届けします。そして第3回は、日経企業の中国人従業員の研修に携わって感じたことをお伝えしたいと思います。

「后海」は紫禁城(故宮博物館)の北側のエリアで、北海公園のすぐ近くにあります。
「后海」は、昔から地元の人の散歩や納涼の名所ですが、10年くらい前から変化してきました。旧北京の住宅様式である「四合院」と現代的な洋風バーとがう まく混在している街並みで、外国人の間でも人気が高まり、観光スポットの1つになりました。夜になればなるほど人が集まるので、北京で初めての「不夜城」とい えます。

    夏の后海の一角

    夏の后海のバー

    今回散策したのは夜の9時から10時の間ですが、歩きにくいほど、納涼、観光、デート、地元の常連、外国人等・・・大勢の人がいました。

    バーの数は変化していないと思われますが、中国、特に北京出身の人間には懐かしく感じさせる商店や軽食、グッズ、本屋を以前よりも多く発見できたのが印象的でした。

      その1つは、子供時代に大好きだったヨーグルト(北京酸奶)です。白い磁器の容器に紙の蓋というシンプルなパッケージで、添加物もなく、純朴な味をしています。日本に来て間もないときに、香料がなく、純朴な味に近いヨーグルトを探していたのを、今でも覚えています。

      また、かつて多くの日本の友人や地方出身の中国人に、北京酸奶を紹介したりもしました。しかし、北京に帰っても、だんだん見つけられなくて、数年前には完 全に姿が消えたかと思うほど見られなくなりました。
      今回は、后海でその懐かしい味を味わうことができました。やはりおいしい!外国人の中でも好評です!

        懐旧的な気持ちにさせられるおいしい「老北京酸奶」(昔のままの北京ヨーグルト)

        今回の北京旅では、后海だけではなく随所に、「老北京酸奶」(昔のままの北京ヨーグルト)の宣伝文句が見られ、このヨーグルトがコンビニや個人商店、屋 台、レストランなどあちらこちらで売られていました。この他にも「老北京炸醤麺」(ジャージャン麺)といった昔の北京の庶民的な食事にも人気の復活が見ら れました。

        地元家庭料理の「トマトと卵炒め」などのメニューが入った日系外食店のポスター

        ちなみに北京の日系コンビニでさえも、「老北京酸奶」や「酸梅湯」(昔から熱中症予防として飲まれる飲料水)など、ローカルな「懐旧文化」に関連する商品 が多く売られていました。
        また、后海の帰りに偶然見かけた日系ファーストフード店のポスターに、中国人の定番家庭料理の「西紅柿炒鶏蛋(トマトと卵炒 め)」、「紅焼茄子(焼きなす)」などのメニューがありました。

          改革開放30年以上、外国のブランドが多く入り、パッケージ、作り方、味もグローバル・スタンダードになってきました。多くのローカル・ブランドも同じ運 命です。
          しかし、后海の「懐旧ビジネス」の勢いを見ると、外来のモノや文化に対するニーズはまだ高いものの、「老北京酸奶」に代表されるような現地文化に 回帰するブームも、かなりの勢いでやってきているのではないかと推測されます。
          本社ノウハウの適応を基本方針とする北京の日系コンビニでさえも、このブー ムにいち早く乗っているように見えます。

          一方、后海の洋風バーの勢いも衰えていません。音楽に将来の夢を抱いている若者は、中国の各地からここに集まってきます。
          全国的な人気歌手の中には、実際 に「后海出身者」が多くいます。夜になると、軒を連ねるさまざまなバーの扉が開かれたままで営業していますから、通行人でも外からステージを見ることがで きます。街全体に、客を誘う声とさまざまな楽器の音が響いています。

          現地と外国、旧と新の融合は、ビジネスでの永遠の原動力になっているかもしれません。

          (産業能率大学 経営学部 教授 グローバルマネジメント研究所 研究員 欧陽 菲)