外国人スタッフと働く-職場で押さえておきたい気配りポイント- 【第3回】

今回が最終回です。「外国人スタッフと働く職場で押さえておきたい気配りポイント」をご紹介します。

その5 知っておきたい年中行事

正月、お盆など日本にある年中行事と同様に、外国にもさまざまな年中行事があります。
共に働く外国人スタッフの国でも、日本とは異なる年中行事があるはずです。中でも、祝日にかかわる行事を知っておくことは重要なことです。外国人スタッフが日本で働く場合、日本の習慣に合わせることが基本ですが、気持ちよく一緒に働くには、日本人側の気遣いも大切になります。

休暇に関しては、日本人が正月には必ず休むように、外国人スタッフにも「休みたい時期」があります。
例えば、中国では旧正月に多くの方が長期の休暇を取ります。
米国でも、11月の感謝祭前後に1週間ほど休暇を取ります。日本では普通の日であっても、母国の慣習に沿って、お祝いや行事を楽しみたいと思うのは素直な気持ちでしょう。

以前に、友人のアメリカ人が10名の仲間と共に、ある日本の企業での研修のため半年間日本に滞在することになりました。その滞在中、初めて「家族と離れ外国での感謝祭」を迎えました。
そのことを知った日本人スタッフが、社内でのターキー(七面鳥)付き食事会を企画してくれたそうです。
当時あまり市販されていなかった七面鳥を調達し、その七面鳥を調理することができるレストランを手配。焼き上がった七面鳥は、日本人スタッフにより切り分けられ、皆で食べたそうです。
日本人スタッフが懸命に手配したターキーは、全員分の量はありませんでしたが、その気遣いは十分すぎるほど伝わり、楽しい異文化交流の場となっていたそうです。
半年の研修を終えたその10名は帰国の際、「忘れられないサンクスギビングになった」と感謝していたそうです。

外国の祝日や年間行事はインターネットでも調べることができます。大事なことは、相手を思いやる気持ちです。
相手のことを考え、言葉をかけることが外国人スタッフの心の安らぎになることもあります。
「明日から中国の旧正月ですね。日本のお正月と違いますか」「今週は、サンクスギビングですね。感謝祭にはどんな食事をするのですか」そんな一言が、社内での小さな異文化交流のきっかけにもなるはずです。

その6 社内のグローバル化に向けて

外国人スタッフ、日本人スタッフが力をあわせて働くグローバルな職場とは。
そこで求められるのは、どのような能力でしょうか。語学力?それともコミュニケーション力?

ここでは、最後にこれからのグローバルな職場環境に対応するために必要なことを、異文化コミュニケーションという視点で考えてみましょう。
一般的にグローバル人材とは、「語学堪能」「海外生活経験がある」と思われがちです。
しかし、流暢に外国語を話すことができ、海外経験がある方が必ずしもグローバルな職場に対応できるとは限りません。

そのヒントとして、グローバル人材に共通する以下の3つの点を挙げることができます。それは、「相手の異文化に興味を持てる人」「相手とコミュニケーションを取ろうとする人」「自分の考えや意見を伝えられる人」です。

つまり、語学力や海外経験は必須条件ではなく、海外へ目を向け、相手の文化に興味を持ち積極的にコミュニケーションをとる異文化コミュニケーションの能力が重要なのです。

この異文化コミュニケーションは、「自分の育った環境以外の文化に接触した場合に起きる違和感」でもあります。文化の違いを知り、「異なる文化」を寛容に受け入れること、相手の文化に敬意を持つことも大事です。
自分の考えや思いを、文化の異なる外国人スタッフにも分かるように伝えることができる人は、これからのグローバル人材にとって重要な能力を持っていると言えるでしょう。

そのための第一歩は、外国語が苦手でも、まずは挨拶をすること。たとえジェスチャーでも、日本語になってしまっても「伝えようとする気持ち」が大切です。
日本的な「言わなくてもわかってもらえる」発想は捨てて、相手の国について外国人スタッフに直接聞いてみましょう。伝えようという気持ちが高まれば、語学力は後からついてくるはずです。

そして、こういったコミュニケーションが生まれるためには、外国人スタッフと日本人スタッフがコミュニケーションをしやすい社内風土も大切です。
グローバル化の第一歩として、気軽にコミュニケーションできる職場づくりから始めてみてはいかがでしょうか。

産業能率大学 経営学部 准教授 池田 るり子