グローバル教養力を身につける ~ 英語で茶道体験(後編)~

全日本空輸株式会社様 オープンセミナーに密着取材

英語で茶道体験(前編)では、セミナーの一連の流れに合わせて講師陣や参加者の様子、研修風景など写真とともにご紹介させていただきました。

英語で茶道体験(後編)では、セミナーの企画・運営を担当されているANA人財大学 大西愛子様、上野達也様へのインタビューをお届けします。

高橋
近年、グローバル人材の育成に欠かせない要素となってきている教養力(リベラルアーツ)ですが、貴社は早くからその重要性に着目し、「ANAグループ総合研修ガイド」にも『リベラルアーツ』としてカテゴリーを設けられていますね。その背景を教えてください。

大西
1980年代後半における定期国際線就航開始以来、その歴史は30年と長きになりますが、事業運営の本格化にともない、世界のリーディングエアライングループを牽引する人財の育成が急務となりました。

ANA人財大学としては、このグローバル人財像を具現化するための一助として、研修ガイドを作成し、グループ社員には活用を促しています。

上野
世界で活躍するためには、大前提として“自己の確立”、言い換えれば自分自身の中に判断軸を持つことが重要だと思っています。
そのためには、己を知る、自社を知る、自国を知ることが重要と考え、「リベラルアーツ」では、経済、社会、哲学、宗教、日本文化など幅広い分野についてオープンセミナー(集合研修)や通信研修で学べるように構成しています。



高橋
そのうちの一つが、オープンセミナー型の「英語で茶道体験」ですが、導入のきっかけを教えてください。

大西
今から3年ほど前になりますが、「リベラルアーツ」系の講座をいろいろと探していたときに、産業能率大学さんからこのセミナーをご紹介いただきました。

私自身が、海外のお客様に対して日本の文化を自らの言葉で発信することの重要性を実感していましたので、目的と合致したプログラム内容であるとともに、関講師の英語力にも魅了されました。

高橋
「英語で茶道体験」も今回で4回目の開催となりますが、運営サイドとして携わる中で、“気づき”につながるようなエピソードがあればお聞かせください。

上野
通常は別々に学ぶことが多い“英語”と“茶道”ですが、2つの要素を同時に学ぶことによって生まれる相乗効果というか、副産物的なoutputがあると思うんですね。 今回であれば、“スキルよりもおもてなしの心さえあれば、どんな国籍の人たちともコミュニケーションができる”ということを体感していただける訳です。

また、“今まで分からなかったことが分かる”という“学ぶ楽しさ”の演出も自己啓発を促進していく上でとても重要な点です。

学びのきっかけは人それぞれですので、できる限り体験型やディスカッション型など受講者が能動的に参加できるセミナーを増やしていきたいと思っています。

大西 このセミナーを受講したフロントラインのスタッフから、「お客様から茶道について質問を受けたときに、セミナーに参加したときの知識が役に立った」という報告を受けたことがあります。 運営サイドとしては、実際に現場で活かされているという生の声が一番嬉しいですね。

高橋 最後にご自身が考えるグローバル人材の要件をお聞かせください。

大西 語学力としてのコミュニケーションスキルは必須条件として、それ以上に「人間力」のある人がグローバルで活躍できる人財だと思います。 「人間力」とは、自己の中に判断軸があり、自分の考えをしっかり伝えることができる。「人間力」のある人はどのような国であろうと受け入れてくれるでしょう。

上野 まずは、何事にも興味を持って「知る」こと。そしてそれを体験的に「使ってみる」「触れてみる」こと。最後に現場で活用できて、はじめて「身につく」ことができると思うんですね。私は整備部門出身なので、経験知として、こうした学びのサイクルが必要であると実感しています。 グローバル人財も自ら進んで学びのサイクルを回せる人、実行力のともなった人なのではないでしょうか。 今後も試行錯誤しながらANAグループのグローバル人財育成に向けて、自らも“学びの姿勢”を大切にしていきたいと思います。


2015年4月22日
インタビュアー
グローバルマネジメント研究所員
高橋 輝子