中国の経済と商機を追う(第4回)

近年、きめ細かいサービスで、顧客を創造しようとする中国現地企業も現れている。強みは、中国人自身が中国の消費者を深く理解しているところにある。

北京で良く見かける「海底撈」は農民工の劉勇(今はCEO)が屋台から始めた火鍋料理のチェーンである。
火鍋は冬に人気の料理であるが、どの店も夏にも1~2時間の行列で客が賑わう。
広告はしていないのに、口コミで人気店になっていく。サービスの良さが定評である。

待つ時間から顧客の満足度がかなり高い。テーブルを囲い込み、座って待つ ; お菓子、果物、飲み物は食べたい放題 ; 囲碁、将棋、トランプなどのゲームで楽しむ ; 女性にはネイルサービス、男性には靴を磨く ; 年配者を見たら、時にはおかゆを作ってくれる。
待つ間に、家族や友人同士を超えて、おしゃべりやゲームの対戦をし、輪になって、楽しいコミュニティができる。

食事の席に案内されてからも、豊富なたれを自分で自由に選ぶ ; 料理を半分目注文できる ; 鍋の水蒸気でメガネが曇ったら、メガネ拭きを渡される ; 携帯電話を使用する顧客を見つけたら、カバーを持ってきて、汚れるのを防ぐ ; 長い髪の毛の女性の不便さを感じたら縛るためのゴムを渡される ; 飽きた子供をあやす ; うどんを注文したら、踊りながら作ってくれる、といった楽しいサービスで、店内に客の拍手や笑いが絶えない雰囲気が漂う。

店員の純朴な笑顔と誠実なサービスで中国の大衆消費者にとって居心地の良いサービスで、温かさを感じる。 食事しに行くというよりも、このサービスを体験しに行く客も少なくない。

実店舗の衰退とは裏腹に、スマホやネット購買ユーザー数が爆発的に増加する。参入する企業も多い。
同時に、企業の俊敏さと顧客満足との両方の能力が試される。

この環境において、中国の地元企業は顧客満足を重視する戦略で急成長している。
有名な淘宝網(タオバオ)や当当網(ダンダン)に加え、近年、凡客誠品(VANCL)と京東商城も注目されている。

凡客誠品は自社ブランドを育成するために、配達ミスや商品のすり替え、偽物、試着できないというネット販売の盲点に着目し、配達時に顧客に確認させる・試着させるという体験マーケティングと30日間以内に返品可能のサービスを打ち出している。29元のTシャツでもこのサービスを適用する。
このサービスが好評で、高い商品も売れて、最初の数年間は、年間300%の成長を実現している。

京東商城の年成長率は、創立6年間平均200%。正規商品、安さ、迅速さを武器にしている。
当社は、中国の事情を踏まえ、巨額の投資を惜しまず、北京、上海、広州、成都などで自社物流センターを建設し、配達の丁寧さ、正確さ、迅速さで独自性を作り出している。
全従業員の60%を物流に動員し、12の都市と地域で当日配達(「211限時達」、すべての地域の送料無料(「全場免費運」)、返品、修理などの苦情を100分以内に処理する(「售後100分」)といったサービスを実現している。

顧客に常に期待以上のウォンツが満たされたときの感動を与えるために、現地人の活用は不可欠である。
次回は、本社適応と現地適応の観点から、現地人材の育成と活用方法を考える。

(産業能率大学 経営学部 教授 グローバルマネジメント研究所 所員 欧陽 菲)

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