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脳科学者の池谷祐二さんは、著書 『のうだま』 で人間の脳は飽きやすいようになっていて、どんなに楽しいことでも、脳がそれに慣れてマンネリ化すると飽きるようにできている。と言っています。つまり、「三日坊主は脳の機能」なのです。その脳の機能を「馴化(ジュンカ)」と言います。「自分だけ飽きやすいのではない」という事実はホッとさせてくれますね。
池谷さんによれば、このような馴化の機能は、人が生きていくために必要な反応として生まれながらに備えているとのことです。しかし、注目したいのは「馴化」は悪いことばかりではなく、続けるパワーも生み出すという驚きのもう一つの側面も兼ね備えているということです。
続けるパワーも生み出す?・・どういうことかというと、例えば「歯磨き」を例に挙げれば、最初は面倒臭いことだと思っていても、やらなきゃいけないと思って続けていれば、その面倒臭さに脳が馴れてしまって、やがて「面倒臭い」という気持ち自体もマヒしてしまいますね。このように「習慣化」するまで続けていくことで、脳が馴れて、当たり前のよ うになってしまうということも「馴化」の機能とのことなのです。
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「やる気の壁」を乗り越えるためのアイデアを一つご紹介します。私も実践しているとても効果の高いすぐにでもできるやり方です。
![]() | 脳科学者の茂木健一郎氏は『脳を活かす勉強法』(PHP研究所刊)の中で「タイムプレッシャー」という考え方を推奨しています。タイムプレッシャーとは、通常なら60分かかる仕事を、自らのチャレンジとして「30分でやってみよう!」と制限時間を設けることで、脳内の「やる気」に関連する部分を刺激して普段出せないようなパフォーマンスを引き出し、作業能率を上げるというものです。茂木氏は同著で、脳には自ら課した課題に対して、潜在的に持っている力を引き出すことでそれを克服しようとする不思議な力があると説明しています。 |
私自身もタイムプレッシャーを日常的に活用しています。単調であまりおもしろくない仕事だな、あまりやる気が出ないな、と感じる時には「絶対この仕事を60分で終了させてやる!」と強く心に決めます。ストップウォッチを使って、スタート前に「やるぞ!やるぞ!」と気合いを入れてから始めるとさらに効果があります。おもしろいのは、この方法で仕事を始めて集中度が高まってくると、時間の流れがゆるやかになったように感じることです。また、ダラダラと仕事をした時よりも、はるかにスピーディーに、かつクオリティも高く仕事を進めることができます。
茂木氏は、タイムプレッシャーの効果を上げるための絶対的な条件として、時間にしても仕事の難易度にしても、他人から強制された基準は逆効果であり、「自分自身で決める」ことが大切だと説明しています。飽きてしまうか、続けられるか、は自分次第ということですね。
もしも「やる気の壁」が深刻なものであると感じるならば、なぜこのことを始めようと思ったのか、という原点に立ち戻ってみてはいかがでしょう?連載第1回アクションのためのレシピをもう一度試してみることは、「やる気の壁」を乗り越えていくことにとても有効です。
>連載第1回アクションのためのレシピはこちら
何か新しいことを始めるときには「やる気の壁」が出現してくるのは当たり前、特別なことではなく誰でも経験すべき試練なのだと考えてみてはいかがでしょう。そして、その壁を乗り越えてこそ、目指している自分のあるべき姿に近づくことができるのです。
参考資料 : 最上雄太(2011)「連載・行動を変える「やる気」学」p34-p37 『バリューコンピテンシー第30号』 社団法人日本バリューエンジニアリング協会 |