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【第6回】サービスの現場を定量的に捉える新しい考え方~IE分析手法のサービス業への適用~

2013/08/19

論旨

本論は、製造現場の改善に用いられてきた管理技術の一つであるIE(Industrial Engineering)の分析手法を、新たな形でサービス業に適用し、作業の効率化につながる可能性について考察した。
学校法人産業能率大学 総合研究所 研究員 齋藤 義雄
著者:学校法人産業能率大学 総合研究所 研究員 齋藤 義雄(公開当時)

はじめに

サービス業は製造業に比べ労働集約的であり、自社の利益を確保するためにパートやアルバイト従業員が中心となっている企業も多い。特に、BtoBビジネスを行うサービス業は、取引先からの価格引き下げの要請が厳しいため、現場の生産性向上によるコストダウンが求められている。

今回調査したA社は中堅の清掃サービス会社であるが、多くのサービス業と同様に生産性向上の悩みを抱えている。A社では、家電量販店やショッピングセン ター、コンビニエンスストア等の小売業を中心に店舗の夜間清掃を行っている。契約単価の増加が見込めない経営環境の中で利益向上を行うには、品質を維持したうえで清掃作業の効率化を図り、作業時間の短縮や人員削減によるコストダウンが必要である。

しかし、中小のサービス業では生産性向上の専門スタッフが配置されているケースが少なく、改善活動が現場任せとなっている企業が多い。そのため一般的なサービスの現場では、管理技術を活用した取り組みが行われていないために、勘と経験に頼った活動となっている。

IE分析手法は人や物の動きを定量化するものであり、現場の様子を客観的に表現することができる。分析の結果から問題の原因と改善の着眼点を得ることで、コストダウンにつなげることが可能である。今回の試みは、清掃作業にIE分析手法を適用することで、サービス業における科学的なコストダウンのアプローチを実践するものである。

キーワード

【IE(Industrial Engineering)】
経営工学、管理工学と翻訳されることもあるが、“IE(アイ・イー)”とそのまま呼ばれることが多い。IEは、人、材料、設備等の総合的なシステムの問題を解決することで生産性の向上を図る技術であり、生産活動の現場において問題解決のための技法として広く用いられている。