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グローバル時代の仕事と働き方【第2回】

「信頼関係」と「問題解決」を分ける

今日のグローバル化は、企業が国境、業界、市場などのさまざまな「垣根」を越え、新たな仲間と連携し、問題を解決する時代です。それが新しいコミュニティーづくりなのです。

グローバル時代の成功事例の一つに、アップルのiPhoneがあります。
それまでノキアによって制覇されていた携帯電話の世界市場に、携帯電話を作ったこともないアップルが業界の「垣根」を越え市場に参入し、いとも簡単に世界の携帯電話市場の有力プレーヤーになりました。その際、アップルは、有名企業ではなくても、自社の問題を一緒になって解決してくれるサプライヤーと連携し、スマートフォンという新たなコンセプトの携帯電話を作り上げたのです。

アップルにとって、サプライヤーの国籍や過去の実績は重要ではないのです。
日本という国境の「垣根」から出られなかった日本の携帯電話メーカー、携帯電話という市場・技術の「垣根」から出られなかったノキアが、「垣根」を作らないアップル連合(コミュニティー)に負けたのです。

グローバル環境下の仕事の進め方
日本的な仕事の進め方
(垣根のあるビジネスの現場)
グローバル環境下の仕事の進め方
(垣根のないビジネスの現場)
特徴 信頼関係と問題解決を同一視する 信頼関係と問題解決を分ける
メリット ・意思の伝達が容易である
・「長い付き合い」で安心できる
・役割分担が明確である
・特定のパートナーとの関係が深まる
・自分の利害を表明しやすい
・解決できなくても関係を維持できる
・対等な関係のパートナーが増える
・新しい問題解決や革新につながる
デメリット ・役割分担から主従関係になる
・新しいパートナーを見つけにくい
・問題解決の結果が関係に影響する
・問題解決に革新性がない
・関係を割り切ることができない
・意思の伝達が煩雑で面倒である
信頼関係が構築できない場合、お互いの関係が契約に縛られる(置き換わる)
・経営環境が変化するたびに新たなパートナーを探す必要がある

アップルの成功例のように、これからのグローバル企業は成果を出すためにさまざまなコミュニティーのメンバーと一緒に問題解決を行う必要があります。その最前線にいるのが海外赴任者です。
国境はもちろんですが業界や業種という「垣根」を自ら越え、積極的にさまざまなパートナーと対等な立場で交渉し、問題を解決していくことが求められるのです。

このグローバルな問題解決において一つ気をつけなければいけないことがあります。それは、コミュニティー内で自分の利害をあいまいにしたまま譲り合いを大切にする『日本的な信頼関係』を引きずらないことです。

信頼関係が問題解決に寄与することは確かですし、それがビジネスの前提となります。しかし、信頼関係が強ければ問題解決(=ビジネス上の取引)も成功するとは限りません。

不確定要素が多いグローバル環境下のビジネスでは、お互いがどんなに努力しても報われるとは限りません。だからこそ、信頼関係と問題解決を分けて考えるのです。
たとえ問題解決ができなくても、お互いが努力したプロセスを尊重し、個人的な信頼関係をきちんと維持する必要があります。グローバル化した未来を展望すると、その信頼関係という資産は必ず役に立ちます。

信頼関係と問題解決を分けることが出来ない方は、それまでの信頼関係を損なうことを恐れるあまり、真の問題解決を目指すことできず、最終的に中途半端な妥協策を契約書としてまとめようとします。

グローバル時代の未来を切り開くことができるのは「契約書」ではなく、「信頼関係」なのです。

「日本のやり方」が「コミュニティーづくり」を阻害する

アジア各国の日系企業に勤めるローカルマネジャーの方と現地マネジメントのあり方について議論をすると、「日本のやり方」という言葉が頻繁に出てきます。肯定的な意味もありますが、不満や言い訳、反発を意味する場合も見受けられます。

日系企業ですから、現地社員は「日本のやり方」に従う必要があります。また、「日本のやり方」で確実に成果をあげることができるのですから、「日本のやり方」に間違いがあるわけではありません。

ただし、現地社員はその必要性をよく理解せずに盲目的に従っているのを目にします。
なぜこのようなことになるのでしょうか。

日本人のマネジャーは、現地社員のビジネスの基礎能力のなさを理由に、彼らとのコミュニケーションを面倒に考えてしまうことが多いようです。また、海外赴任者にとって現地は永住の地ではありません。5年もすると日本に戻ることになります(図参照)。

限られた期間でも、赴任先できちんとしたコミュニケーションが取れていないと、現地社員は海外赴任者の考えや行動を「日本のやり方」として一括りにしてしまうのです。海外赴任者は、この点をよく踏まえて現地社員と接する必要があります。

海外拠点で仕事を効率的に進めるために、海外赴任者の方は自ずと日本の本社の規範やルールを根拠に意思決定をしていくことになります。また、アジア各国で採用された社員(特にローカルマネジャー)は日本人が決めたことを素直に受け入れますので、「日本のやり方」はある程度うまく機能します。

ただし、彼らにその理由を考えさせることもなく「日本のやり方」を一方的に押し付けてばかりいると、海外赴任者への不満が蓄積するばかりか、現地社員たちの問題解決力は弱まるばかりです。結果として、現地法人の本社依存が強くなります。

グローバル化は新たなコミュニティーづくりです。
海外赴任者が短期的な仕事の成果をあげることだけに注力していると、現地社員とは表面的なコミュニケーションに陥ります。これが新しいコミュニティー内の信頼構築に良い影響を与えないことは容易に想像できるのではないでしょうか。

「契約関係」ではなく個人的な信頼関係を構築する

海外赴任先の現地社員が、日本の本社の規範やルールを理解するためには、場合によっては、創業者の思い、経営理念、会社の歴史、あるいは日本人の仕事に対する価値観などについて、赴任した日本人マネジャーが自らの言葉で説明する必要があります。

日本人社員には「言わずもがな」の内容ですが、その分日本人同士で語る機会も少ないので、日本語であってもきちんと説明することが難しい内容です。

一方で、現地社員に対してそれら全てを強制的に理解させたり、受容させたりする必要はありません。大切なのは、「日本のやり方」だと現地から突き放されないように、信頼関係を構築することです。
現地社員にとっても日本人社員とっても、今まで一緒に仕事をした経験は長くはありません。だからこそ、海外赴任者は、お互いのことをよく理解しようという個人的な信頼関係から始める必要があります。この個人的な信頼関係があるからこそ、お互いの利害や関心を率直に表明でき、解決すべき問題が見えてくるのです。

私のクライアント先である、日系インドネシア企業に派遣されてきた日本人マネジャーは赴任早々、彼の思いが関係部門のインドネシア人マネジャーの心を動かしました。
彼は、工場の現場で問題を発見し、それを英語ではなくインドネシア語でメールを発信したのです。たどたどしいインドネシア語にもかかわらず、自分の考えを伝えようした日本人マネジャーのメールを、ローカルマネジャーが必死になって理解しようとしたのです。

赴任早々ですから拙速な行動と思われるかもしれませんが、ここに海外赴任者として重要なポイントが2つ隠されています。それは、「個人的な信頼関係」「自分の考え」の表明です。契約関係だけを根拠にローカルマネジャーに問題解決を命じても、彼らは決して主体的に動くことはありません。

自分の上司が、日本語が不得手な外国人だったと考えてみましょう。その上司が、たどたどしくても一生懸命日本語のメールで何かを伝えようとしてきたとき、どのように感じるでしょうか。
こうした信頼構築の土台があってこそ、「自分の考え」の表明につながり、問題の明確化と問題解決につながっていくのです。

海外赴任経験者対象の調査
海外赴任の経験から学んだこと(自由記述を分類) n=344
1位 相手の文化・風習・価値観を理解することの必要性
2位 コミュニケーションの大切さ・時間をかけた粘り強いコミュニケーション
3位 具体的、論理的、明確な指示・主張
4位 日本の考え方・やり方を押し付けない
5位 丁寧な状況説明の必要性
※産業能率大学総合研究所「海外赴任者に対する教育・支援の現状」調査

学校法人産業能率大学総合研究所
経営管理研究所 主幹研究員 内藤 英俊

本コラムは「繊研新聞」(繊研新聞社)での連載を一部修正して掲載しています。
著者の所属・肩書きは掲載当時のものです。

本コラムの内容

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