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その2

TRIZ の特徴

前回は TRIZ の定義、TRIZ で何をするかについて考え、TRIZ は独創的で実際的なアイデアを得るための方法だと説明しました。今回は、アイデアを得る方法としてのTRIZはどのような特徴をもっているかについて触れたいと思います。

実はアイデアを得るための方法というのは世の中に随分たくさんあります。日本で使われている方法だけでも数十あると思われます。本学が日本の企業を対象に行った調査では、ブレーンストーミング法、KJ 法、チェックリスト法、特性列挙法、親和図法、欠点列挙法、希望点列挙法などがよく使われているようです。特性要因図もある意味ではアイデアを得る方法と言えるでしょう。

これらの方法に共通した着眼点は人がものを考える時には様々な制約が働いたり、人の脳の持つ限界があったりする。こうした制約を取り払い、脳の限界を補ってやることにより、得がたいアイデアを得ることが出来るという点です。 TRIZ でもこのような視点は取り入れられていますが、同時に他の全ての方法がもっていない特徴がいくつかあります。


前回にも簡単に触れましたが、TRIZ ではアイデアを得るために歴史の分析から得た知識、先人の知恵、他部門の知識を使うことが方法の一部として組み込まれている点です。

このような視点は企業活動の現場では断片的に活用されています。実は、具体的な問題に直面して、先輩が後輩にものの考え方や、コツを教えるところが TRIZ 的発想の萌芽した場面と言えます。

このような、先輩から後輩に伝承される以外では活用されていないノウハウや、歴史を分析することで初めて判ってくる法則性などの中で、色々な技術分野に共通するところを抽出して、アイデアを得るための方法の重要な要素として取り入れたところが TRIZ の大きな特徴です。

2つ目の特徴は、必ずしも TRIZ だけの特徴ではないかも知れませんが、大切な要素としてはっきりと取り上げられているところが TRIZ の特徴といえると思う点です。

それは、問題解決に活用できる「資源」(以下 TRIZ 的な資源という意味で「リソース」とします)という視点です。 TRIZ では出来るだけ余分なモノやエネルギーを動員しないで問題を解決しようとします。新しい材料や、部品を採用することによって問題がきれいに解決されることはたくさん有りますし、それはそれで問題はないわけですが、既存の要素(リソース)の範囲内で問題を解決しようとする視点を導入することによって、原理的に新しい発想の捜そうという姿勢が生まれますし、現状打破の観点が発見されるチャンスが出てきます。

この視点は、より良い材料を求めることが困難になり、大きな投資をしてもこれ以上部品を改良することが困難になった時点では大きな武器となります。このような改善のアプローチが限界に達する以前に、あるいは改善的アプローチによる費用対効果が悪化しつつある段階で他社に先駆けて、原理的に新しい改善策を採用するチャンスが得られるといえます。


TRIZ の3つ目の特徴は発想を得るいくつかのテクニックです。こうしたテクニックこそが TRIZ の最大の特徴と考えている人も多数います。 TRIZ のテクニックで最も有名なものは TRIZ 的矛盾の発想です。 TRIZ 的矛盾とは以下のような考え方です。

● 製品や技術が進化してゆく過程で、それ以上の進化を達成することが極めて困難な、限
 界的な状況が出現する。これは、それまでの進化を可能にしてきたリソースが使い尽く
 されることによる。このような状況とは「特性 A を改善しようとすると特性Bが悪化す
 る」とか、「同じ特性Aについて、ある条件下では A が高いことが必要であり、他の条
 件下では A が低いことが必要である」ということである。(この二律背反的な状況を
  TRIZ では「矛盾」とよんでいます。)

● 重要な技術的進歩はこのような矛盾をうまく解決することによって達成される。

● 現実に解決しようとしている問題の中から TRIZ 的矛盾を見つけだして、これに対する
 解決策を発見することによって、技術的な革新を成し遂げることが出来る。

この考え方は、技術的な問題に限らず、極めて広い場面で有効ですが、詳細は後の方でもう一度触れることにしたいと思います。


この他、TRIZ の特徴となっているテクニックは、問題を命題の形で記述し、この命題を論理的に読み替えることにより問題解決の糸口を探すアプローチ、具体的な問題を一般化して標準的な問題に読み替え、そこで得られる標準的な問題の解を、類推思考によって具体的なケースにおける解に読み替え直すアプローチなどなどですが、ここでも触れたように類推・連想によってアイデアを得たり、チェックリストを活用したりする様々な一般的なテクニックも多用されています。

一般的なテクニックに関連しますが、 TRIZ の4つ目の特徴は方法としてオープンであり、他の方法の長所をどんどん取り入れてきた点だと思います。現に VE の「機能」という視点や、QC の「特性要因図」の発想は TRIZ に取り入れられて活用されていますし、アメリカでは TRIZ を QFD タグチメソッドと連携させて使う人たちが多数います。また、最近ではシックスシグマの活動の中で TRIZ を活かす動きも広がっています。


ここで取上げる TRIZ の特徴の最後は、筆者の最も大切だと考える TRIZ の大きな利点です。それは TRIZ がアイデアを得るための方法を統合するためのプラットホームとなりうる、大きな可能性を秘めているということです。今までに触れた 4 つの特徴を整理しなおして、 TRIZ がどんな要素から成り立っているかを示すと以下の 5 つの要素を挙げることができます。

技術の発展における法則性(繰り返し起きる変化の形)
技術や製品の進化、改良をもたらす方法の定石
技術や製品の進化、改良に活用できるリソース(資源)の探し方
技術分野を問わず利用できる物理・科学・幾何的な現象、効果
問題の核心を理解し、考えるべき対象を絞り込み、発想を広げるためのテクニック


TRIZ というのは、上にあげた5つの要素を、前回の最後のところで触れた用途に合わせた手順に従って用いることで、アイデアを得る方法と言い直すことが出来るのです。

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