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IFRS時代をスムーズに乗り切るための基礎知識 -第2回-

IFRSは誰のものか?

前回「会計ビッグバン」によって金融市場に対応する経営へと方向転換していることをお伝えしましたが、その中でいくつかの疑問が沸いてきました。

▼ 金融市場にばかり目を向けた経営改革でいいのか?
▼ 従業員を含めた幅広い利害関係者を考えなくていいのか?
▼ 短期的な利益の追求ばかりでなく、長期的展望にたった
  日本的経営の良さを再確認するべきではないのか?

「そもそも、会社はいったい誰のものなのだろうか?」

「会計ビッグバン」の影響をしっかり受け止めたうえで、経営のあり方を見直す機運が生じてきたのです。

    学校法人 産業能率大学 総合研究所 経営管理研究所 赤松育子(あかまついくこ)

    学校法人 産業能率大学 総合研究所 経営管理研究所 赤松育子(あかまついくこ) ※所属・肩書きは掲載当時のものです

    その一方で会計の世界では、「投資家の視点にたった情報開示」「極端なまでの金融市場主義」をどんどん推し進める動きが進行していました。それが現在のIFRSを取り巻く潮流です。

    つまり今般のIFRSは、「会計ビッグバン」のときとは趣を異にしています。「会計ビッグバン」のときには経営と会計は同じ方向を向いていましたが、IFRSはもはや経営に役立つ会計ではありません。投資家志向性、マーケット志向性をより強めて、経営からどんどん乖離していく・・・それがIFRSの現状です。
     
    だからこそ、我々はIFRSに対する違和感がぬぐえないのです。投資家志向、マーケット志向の強いIFRSは、従業員や地域社会を大切にする経営、社会の器としての企業といったような日本的経営とは、全く趣が異なるのです。

    IFRSの本質を見抜こうとするならば、「会計基準のグローバル統一」といったスローガンを鵜呑みにしてはいけません。それでは会計をどうするかという議論の前に、そもそも経営の実態があるという大切な現実が見えなくなってしまうからです。

    繰り返しになりますが、IFRSは投資家のためだけを考えた会計基準です。その概念フレームワークの中で、財務諸表利用者として、投資家、従業員、貸付者、仕入先及びその他の取引業者、得意先、政府及び監督官庁、一般大衆を上げていますが、このうち最もリスクを負っている投資家(株主を含む)の情報ニーズを満たせば、他のステークホルダーの情報ニーズも概ね満たすと考えているのです。

    2.利害関係者は投資家だけか?

    ところで・・・

    最もリスクを負っている投資家(株主を含む)の情報ニーズを満たせば、他のステークホルダーの情報ニーズも概ね満たす

    これは本当でしょうか?

    例えば、会社が倒産した場合を考えてみましょう。

    会社が倒産したとき、残余財産の分配順位は債権者(貸付者)の方が先ですから、資金提供者という点では、確かに債権者(貸付者)より投資家の方がリスクは高いですね。
    しかし投資家の有する株券が紙切れになる前に、投資家の利益を守るためにレイオフされる従業員や代金回収しそこなう取引先がいるはずです。そう考えると従業員や取引先の方が高いリスクにさらされているともいえるでしょう。

    またもし投資家にとってのリスクが一番高いと仮定したとしても、一番高いリスクを負担しているステークホルダーの情報ニーズが満たされれば、他のステーク ホルダーの情報ニーズが概ね満たされるという理屈には、納得がいきません。ステークホルダーによる情報ニーズはリスクの程度というより、それぞれの思惑で 変動すると考えたほうがしっくりくると思いませんか?

    このように考えてくると、「投資家の情報ニーズを満たせば、他のステークホルダーの情報ニーズも概ね満たす」とは言い難いといえるでしょう。事実上、他のステークホルダーの情報ニーズは満たされないのです。

    3.誰か忘れていませんか?

    そして最後に、とても大切なことをひとつあげましょう。

    概念フレームワークでいう財務諸表利用者として、

    • 投資家
    • 従業員
    • 貸付者
    • 仕入先及びその他の取引業者
    • 得意先
    • 政府及び監督官庁
    • 一般大衆

    があげられていますが、この中に重要なステークホルダーが抜けていることにお気付きでしょうか?
     
    答えは「経営者」です。

    感覚的には、投資家だの他のステークホルダーだのと言う前に、財務諸表は経営管理のためにあるという感じがしませんか?

    確かに財務会計で作成された財務諸表そのままを利用することはしなくても、管理会計上の経営分析をしたり予算を策定したりする際に、その基礎数値として財務諸表を利用していますよね。
    だからこそ、新入社員も中堅社員も、自社の財務数値を読み込んで簡単な財務分析ができるようになる必要がありますし、年次があがっていけばいくほど、事業計画や経営戦略に活かせるような計数感覚が求められているわけです。
    ビジネスパーソンである以上、自社の経営を知るために財務数値を読むというスキルは必要不可欠なのです。

    しかしIFRSの想定するステークホルダーには「経営者」が存在しないのです。すなわちそれは、IFRSはあくまでも投資家のためのものであり、経営者が経営管理目的に利用するということは始めから想定していないということを意味します。

    だからこそ、

    ▼ 経営と乖離していくIFRSとどう付き合っていくのか?
    ▼ これからの管理会計をどうするのか?

    ということを真剣に考えなくてはいけないのです。

    以上ことを、まずしっかりと理解していただければと思います。

    IFRSは投資家のためのもの

    管理会計のゆくえ

    IFRSはそのままでは管理会計には適していません。なぜならIFRSにもとづく財務諸表は投資家のためのものだからです。加えて売上高や利益の表し方も変わりますから、今まで用いてきた経営分析の指標の連続性も保たれません。

    とはいえ実は財務会計は外部報告のための会計ですから、そのままでは経営管理に使えないというのは当然のことです。今に始まったことではありません。

    ただし従前の日本基準にもとづく財務会計では、それを少し修正して管理会計に用いることができました。しかしこれからは、財務会計(=IFRS)をそのまま管理会計に用いることは難しくなります。では、どうすればよいのでしょうか?

    結論からすれば、財務会計とは別に、自社の経営管理に役立つ管理会計の仕組みを再構築すればいいのです。すなわちIFRS時代の到来は、管理会計を見直す大切な好機になるのです。
    自社の確固たる価値観や経営思想にもとづいて管理会計を構築すれば、IFRSに経営が振り回されることはありません。軸足をしっかり持っておき、経営者はIFRSを恐れすぎないようにしなくてはなりません。

    管理会計の再構築

    おわりに

    会計ビッグバン以前は、会計は経営に資するものでした。

    会計を通してマネジメントを理解できましたし、会計は経営管理に有効なツールでした。またこの会計によって作成される財務諸表は、企業のすべてのステークホルダーへの情報提供に資するものでした。
    そして会計ビッグバンによって、金融市場の論理が企業会計に取り入れられました。とはいえこの変革は、経営にマーケット志向を再認識させる好機であったといえます。会計にも経営にも金融市場の思考が反映されたのです。

    ゆえに現在の会計はマネジメント会計ということができます。マネジメント会計、つまり経営者の経営に役立つ会計ということです。なぜなら会計ビッグバンは金融市場の企業評価の観点を経営に反映させた経営革新であったため、会計と経営が同じ方向を向いていたのです。

    それに対してIFRSは投資家のための会計、すなわちインベストメント会計(デューデリジェンス会計、投資価値算定会計)ということができます。言い換えればIFRSは金融市場に軸足をおいた会計、マーケットのためのツールであり、もはやマネジメントのツールではないのです。

    このようにIFRSは、現時点での投資価値を算定して投資家に資するための会計ですから、具体的に個々の規定を覚えるのではなく、M&Aを行うときにどのような情報が有用であるかという観点から全体像を考えれば理解がしやすいでしょう。

    経営と会計は大きく乖離しはじめている

    連載:IFRS時代をスムーズに乗り切るための基礎知識 【全2回】

    • IFRS時代をスムーズに乗り切るための基礎知識 -第2回-

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