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~part1その3:組織と個人への眼差し<前編>【ビジネス思索塾】

ある年齢層を塊で捉え、戦中世代、団塊世代、新人類世代などと世代論的にその特徴や傾向を語ることがある。それぞれの世代には数百万人が属しており、マクロ的には世代間にそれなりの差異はあるはずだ。ただミクロに個々を見れば、世代的な特徴や傾向からは逸脱した例外的な個人がいくらでもいる。日本人論などでも同じことで、マクロには日本人と欧米人の考え方や行動規範に差異はあるが、例外的な日本人も数多くいる。

組織活動や人間行動を考えるときに厄介なのは、多くに共通する事柄は指摘できても、それらがすべてには当てはまらないということだろう。個々を注視していけば、すべてがケース・バイ・ケースになってしまう。自然科学の領域とは異なり、組織や人間にかかわる社会科学や人文科学の領域では絶対的な断定はむずかしい。ただ、すべてがケース・バイ・ケースという底なしの泥沼に嵌まれば、社会科学や人文科学は成立しない。

    曾小川久英教授

    曾小川 久英    学校法人産業能率大学総合研究所 客員研究員

    組織観や人間観を研ぎ澄ますには、期待的な願望(こうあってほしい)や価値的な判断(こうあるべきだ)に陥らず、厳然たる事実を冷静に見つめるしかない。たとえ絶対的な断定はできなくても、事実の集積から多くの組織活動や人間行動に共通する特徴や傾向があぶりだせるのではないだろうか。

    (1)基本的な人間観

    人間には個々におのおのの個性があり特質がある。ただその個別性は安定的に一貫しているものではなく、状況に応じてさまざまに発現しまちまちな反応を示す。本来的に人間は不可解であり、一面的にすっきりと割り切っては捉えられない。

    たとえば、自分は普段から冷静沈着で物事を論理的に筋道を立てて考えるタイプであると自己認識している人がいたとする。でも、その人はいつでもそうだろうか。あるとき急に感情的になったり、混乱して支離滅裂なことを言ったりすることもあるはずだ。意欲的になったり投げやりになったり、優しくなったり邪悪になったり、ときと場合によって、ことと次第によって、人間はさまざまな相貌をあらわにする。

    性善説・性悪説という人間の見方があるが、人はいつでも性善的であるとはかぎらず、いつでも性悪的ともかぎらない。性善的になったり性悪的になったり(日頃から協調的に従っていた人が突然梯子をはずしたり、反発していた人が急に献身的な協力をしたり)するのが人間なのだろう。

    ただ、たとえすべての人には当てはまらなくても、ある程度までは共通する特徴を探ってみるしかない。多くの人間にはどのような傾向があると捉えるのが妥当なのだろうか。

    実現可能性のある見通しをほしがる

    人間は将来に向けての見通しをほしがる。将来への希望、夢、憧れなどの実現可能性を実感したがる。際限のない繁忙感は耐えがたいが、あと一ヶ月という見通しがあればがんばれる。実現したい夢に向かってなら、辛い苦痛も我慢できる(だから、ビジョンや目標が必要なのだ)。逆に、ある目標を達成したときや途中で挫折が明らかになったときに、次なる見通しとして実現可能性のある目標を再度設定しないと茫然自失状態から抜け出せないことも多い(オリンピックやワールドカップが終わると、エアポケットに落ちて引退する人がいるではないか)。

    見通しは自らが描くものである。だれかが与えてくれるのを待っているだけでは、自分が納得できる見通しは得られず、不全感を抱きながらも刹那的に日々を過ごすことにもなりかねない。将来のことはだれにもわからない。何が起こるかは未知である。それでも、人間は先行きを曖昧なままにせず、可能性を信じ見通しを描いて生きるものだ。ただ、不可能な見通しの強要はかえって意欲を削ぐことになる可能性が高い。(ストレッチ目標を設定せよと企業ではよくいわれるが、その線引きはむずかしい。低い目標は高められても、高すぎる目標では、不可能の強要と感じて諦めてしまう。諦めてしまえば、どんなにストレッチ目標でも達成はできない)

    意味を求める

    人間は自分の行動を意味づけする。自分の行動に価値があり、必要なものだと思いたがる。自分の行動は社会にどのように役立っているのか、自分がやっている仕事は会社にどんな貢献をしているのかを意味づけせずにはいられない(だから、企業理念は飾りじゃないんだ。仕事には使命や目的が必要なのだ)。しかし、意味はもともと曖昧なもので、明瞭にはつかみにくい。ひとりの人間の存在価値など、社会や会社全体から見れば小さく、仕事の代替は大半が可能である。

    ただ、たとえそうであっても、自分はかけがえのない自分であり、意味があると思わねば生きられない。曖昧さを自らなりに解釈して意味を形成するのが人間である。(「仕事を続けていくとき、『意味のあることができている』という気持ちや、『うまくできる』という感覚や、『自分で選んだことをしている』という実感や、『自分を取り囲む世界に影響を与えている』という誇りが重要である」と金井壽宏『中年力マネジメント』に紹介されている。意味、有能感、自己決定、インパクトが内発的な動機づけ要因なのだ)

    興味や関心を満たそうとする

    人間は興味や関心があるときには、とくに意欲づけや動機づけをされなくても行動する。好きな趣味は強制されなくてもやるものだ。野球やサッカーの結果を知りたがり、人事異動の背景を知りたがり、他者のプライバシーを知りたがるのは、それに関心があるからで、だれかに知るように指示されたからではない。自分が知りたいから知ろうとするのだ。

    多くの人間は、生死に関わること、男女に関わること、勝ち負けに関わること、非日常的なことには関心を抱くようだ。テレビのワイドショーが、結婚、離婚、葬儀、事故の話題を懲りもせずに繰りかえすのも、興味や関心があり知りたい人が多いからで、だれも見なければ自ずと番組内容は変わるだろう。人事や評価にかかわることでも同様で、だれがどうしたといううわさ話は隠せば隠すほど広まっていく。

    稀にしかないこと、めったにおこらないことも関心を引く。オリンピックやワールドカップは四年おきの祭典だからこそ盛りあがる。毎年開催されれば、感動も日常的なレベルにとどまるのかもしれない。新たな理念、新たなビジョンは稀に策定されるからこそ、社員のエネルギーを結集できる。頻繁につくり変えていれば、「あぁまたか」ということになるだけだろう。

    報酬に執着する

    人間は行動の結果として報酬を得ようとする。何が報酬になるかは人によってさまざまだが、金、名誉、名声、権力などは多くの人間が執着する報酬である。他者からの認知、評価、承認、羨望、注目なども(自分の存在価値を確認でき、自己充足につながれば)報酬になるだろう。人間は比較する病からは逃れがたく、自分と他者とを較べ、その差異で優越感を満たしたり、劣等感に苛まれたりする(だから、めったに褒めない人が自分だけを特定して褒めてくれれば、意欲的になる可能性は高い。でも、褒められなかった人の意欲は落ちかねない)。

    報酬に執着することの裏返しだが、行動しないことによって失うものがあるとき、人は逆に動かざるをえなくなる。すでに手にしている、あるいは手に入るはずの金や名誉や評価を失う可能性があれば、それを失わんがために、意に反したとしても行動してしまう。既得権益を維持するため、面子や立場を守るための行動は日常的に見受けられる。失うものがない人ほど強いといわれるが、既得権益や面子に執着せずに自分の考えだけに従って行動できるからだろう。(企業の不祥事を解釈する鍵はこのあたりにあるのかもしれない)



    人間の行動を促す要因はさまざまだ。不可解さをひも解くはじめの一歩は、自分はなぜこうした行動を取るのか(なぜ上司の指示に従うのか)をふり返ってみることかもしれない。ただ、意志と決断と行動の間には埋めがたい溝が横たわっているように思える。

    火薬と引き金の比喩でよく語られるが、どんなに「やりたい」と意欲があっても、「やろう」と決断するとはかぎらない。「やろう」と決断しても、実際に「やる」ともかぎらない。意志に働きかけたり決断を促したりする動機づけ(弾や火薬を詰める)と実際の行動(引き金を引く)との溝を埋めるものは何なのか。

    でも近ごろは、この溝を簡単に飛び越えた動機の見えにくい衝動的な凶悪事件なども散見される。反面、なかなかこの溝を乗り越えられず、行動を起こせないこともある。意欲の差異とか、意志の強さとか、個人の資質の違いなどで簡単に片づけてしまっていいことなのだろうか。

    【お断り】
    文中でのトピックスについては、読者の皆様方に「こうあるべき」「こう考えて欲しい」と主張するものではありません。本コラムの主旨はあくまでも、ご自身が深く考えていただくためのきっかけをご提供するものです。そのために本連載の内容に触れて、ご自身の意見(異論含む)を振り返ったり、確立いただく中で、ご自身の思考の座標軸をつくるヒントとしていただければ幸いです。

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    ※著者の所属・肩書きは掲載当時のものです。

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