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~part2その4:曖昧さに道筋をつける<完結編・前編>【ビジネス思索塾】

一糸乱れぬ統制を是とする全体主義や独裁主義の社会ならいざ知らず、自由と民主主義を標榜する社会では、多様な主張や異なる見解がさまざまに飛びかうのが常態だ。みんなの意見がひとつに収斂するとは思えず、全員一致での議決はどこか胡散臭い。だれかが圧力をかけたのではないか、何か裏取引があるのではないか、などとつい勘ぐりたくなる。

海に浮かぶヨットは正面から吹いてくる風に向かっても前に進ますことができる。意見の対立や緊張感に満ちた議論があってこそ、社会や組織を前進させることができるのである(議論のない民主制は衆愚政治に堕す)。もちろん対立や闘争が悪質な妨害や陰謀になったり、個人的な攻撃になったりすれば、それは自由と民主主義を破壊するものになるだろう。ちょうど反対に吹く風があまりに強すぎると、ヨットが転覆するのと同じである。しかし、まったく風のない静かな海ではヨットは前に進むことはできない。

ただ、どんなに対立や緊張があっても、社会や組織を前進させるには、複雑な現実とさまざまな意見を吟味して、だれかが目指すべき方向性を判断しなければならない。いかに実現させるかの方法論をだれかが選択しなければならない。社会や組織や人間が本来的に抱える曖昧さを解釈し、だれかが道筋をつけねばならない。だからこそ、だれかがリーダーシップを発揮したマネジメント活動を展開しなければならないのだ。

    曾小川 久英    学校法人産業能率大学総合研究所 客員研究員

    (1)曖昧さのマネジメント

    私たちは、思うようにならないこと、見通しがつきにくいこと、両立が困難なこと、どちらとも決めかねることにしばしば遭遇する。そのうえ、時間が足りない、ひとがいない、みんなの協力が得られない、金がないなど、さまざまな問題にも苛まれる。目指すべき方向性を探しあぐね、対処する方法論に手を拱いていれば、直面している曖昧さの前で立ち尽くしかねない。何とかしなければ・・・・・。この「何とかすること」「曖昧さを切り拓くこと」「曖昧さに道筋をつけること」がマネジメント活動である。

    マネジメント活動は管理することだけではない

    マネジメント活動は「管理(Control)」というイメージで捉えられがちである。しかし、管理には「決められたことを他者に働きかけて成さしめる」という印象がつよい。確かにマネジメント展開の過程では管理的な要素も必要だが、それだけでマネジメント活動の全容を示しているとはいい切れない。そもそもマネジメントは、「直面している事柄をうまく取り扱う」という意味であり、管理よりは「やりくり」「調整」というイメージにちかい。

    Manage = to succeed in dealing with a problem,to control or guide
    Management = the art or practice of managing something

    マスコミ報道で、「与野党間の調整が必要」「各国間での利害を調整しなければならない」という表現を見かけるが、調整とは意見の違いや利害の対立をうまく取り計らうことであり、「マネジメント活動が求められている」と言い換えても差しつかえはないだろう。(まぁ、実際にそんな使い方をすることはないが、言及されている機能は同じはず)

    マネジメント活動とは、「何を目指して:目的や目標の達成を目指して」「どんな対象に:かぎられた有限の資源を対象に」「何をするのか:やりくりして配分し活用する」ことである。
    対象となる資源とは、ヒト、モノ、カネ、情報、技術、能力、時間など。与えられた資源ではない。自分で獲得したり生みだしたりすることも必要。ただ、どんなに獲得に努めても、資源が有限であることには変わりない。

    意思決定がマネジメント活動の要諦

    直面している事態を調整してうまく取り扱うには、だれかが何かを決めなければならない。マネジメント活動の要諦は意思決定することにある。より丁寧にいえば、「関係者間で議論しながら、“どこを目指して”“何をどのようにするか”を判断して意思決定する。その決定事項の達成に向けて、関係者に働きかけ、関係者を誘導すること」となるだろう。

    ただ、何かを選択して意思決定することは、他のことを選択しないことになる。選択されなかったことに絡む摩擦や抵抗や不満は避けがたい。反面、摩擦や抵抗や不満をおそれ、選択しなければ、あれもこれもと網羅的・総花的に取り組むことになり、かぎられた資源では実現できなくなる。不可能の強要と受け取られ、諦めを誘発しかねない。マネジメント活動では、選択にともなうリスクに耐えながら、トレードオフ思考(あることを選択するために他のことを犠牲にすること、野球のトレードと同じ)をせざるをえないはずだ。

    マネジメント活動の展開過程では、「目指したい方向性(目的や目標)を鮮明にすること」「方向性の実現に向けて、何に取り組むか(課題)を決めること」「決めたことの達成に向けて、関係者を誘導すること」が主要なステップになる。
    PDCAというマネジメントプロセスでは、取り組む事柄を選択するまでのプランニングのウェイトが大きい。かつて、目指すべき方向性やそのための課題が明確だったころは、マネジメントの力点が誘導にあり、管理的なコントロールでこと足りた。ただ、先行きの曖昧さや不確実性が増すにつれ、マネジメント活動のウェイトはプランニングに傾いてきたはずだ。

    マネジメント機能はさまざまな場面で必要になる。組織を預かる管理者は組織メンバーが従わざるをえないことを決めて誘導する人であり、自分で自分が従わざるをえないことを決めて取り組むことがセルフマネジメントになる。経営は事業や経営資源のマネジメントであり、仕事やプロジェクトのマネジメント(仕事やプロジェクトの目指すべき方向性とそのためにどうするかを決めて実践すること)、リスクマネジメント(いかにしてどの程度までリスクを軽減するかを設定して取り組むこと)、国家や地方のマネジメント(国家や地方のあるべき姿を鮮明に提示し、そのための施策を決定すること)、タイムマネジメント、家族マネジメント(ん?)など、マネジメント活動は、組織のなかだけでなく、日常的にも実践され展開されている。

    ただ、マネジメント活動は経済的な合理性や効率性だけにもとづくわけではない。権限や責任にかかわること、価値観や規範にかかわること、人間関係にかかわることなどが、実践過程では複雑に絡んでくる。こうした側面は、経済的な合理性や効率性だけで対処できるとはかぎらない。他者との関係を築いたり何かを決めたりするときには、自分自身の判断基準や価値規範(価値観や倫理観なども含めて)が大きく影響する。マネジメント活動の成否は、自らの〈観・想・志〉がいかに研ぎ澄まされているかにかかっているのかもしれない。

    【お断り】文中でのトピックスについては、読者の皆様方に「こうあるべき」「こう考えて欲しい」と主張するものではありません。本コラムの主旨はあくまでも、ご自身が深く考えていただくためのきっかけをご提供するものです。そのために本連載の内容に触れて、ご自身の意見(異論含む)を振り返ったり、確立いただく中で、ご自身の思考の座標軸をつくるヒントとしていただければ幸いです。

    >>『曖昧さに道筋をつける』<後編>はこちらからどうぞ

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    ※著者の所属・肩書きは掲載当時のものです。

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