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【イベントリポート】人生100年時代の「働き方」「学び方」とは

東京大学大学院 情報学環教授
山内 祐平


人生100年時代における、若手社員のこれからの働き方に対して、組織はどのようなことに留意し、育成計画を考えて行けばよいのかご講演いただきました。

若手社員に影響を与える3つの社会動向
これから必要になる資質
これからの若手育成の鍵
ワーク・ライフ・ラーニング・バランスへ

若手社員に影響を与える3つの社会動向

人生100年時代を迎える若手社員のこれからの働き方に対して、どのようなことを考えていけばよいのか、といった視点でお話しをします。

まずはその背景となる、若手社員が退職するまでに予測されている社会動向からご紹介します。

これからの社会動向(1)技術の進歩と仕事の変容

新聞等の報道で、ご存知の方も多いと思いますが、コンピューター技術が急速に進歩していて、従来、人にしかできないと思われていた仕事でも、どんどんコンピューターがする仕事に置き換えられようとしています。

Probability of Computerisation

右側の「High」に位置する仕事が、コンピューターが代替できる確率が高い仕事と予測されている

これは2013年にオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン氏が発表した論文の引用ですが、2030年には、現在のアメリカにある仕事のうち47%がコンピューターに代わるだろう、と予測されています。

当然ながら、原理的に可能であっても本当にそうなるのか、あるいは、今までになかった新しい仕事が生まれる、といったこともあるかもしれません。
ここで大事なことは、人でなければできない仕事が少なくなる、ということです。

新聞記者の仕事を例にすると、政治家へのインタビューは難しいかもしれませんが、株式市場の動向やスポーツの結果などの速報のように、フォーマットがある程度決まっているものであれば、記者と同程度の記事がコンピューターでも書けるようになると言われています。

言い換えると、2030年くらいには、今若手と呼ばれている人たちが担当している仕事の多くをコンピューターが代わるようになるため、職種転換せざるを得ない状況に置かれる可能性が高い、ということです。

当然、仕事内容が変われば、学習内容が変わることにもつながりますから、若手社員の育成に影響を与える、非常に重要な要因として押さえておいてください。

これからの社会動向(2)長寿命化と人生の変容

長寿命化(人生100年時代の到来)

リンダ・グラットン氏が著書『ライフ・シフト』で取り上げ、世界中で話題になったことが、長寿命化、すなわち人生100年時代の到来です。人の寿命は毎年伸び続けていますが、このまま伸び続けた場合、今5歳の子供たちの平均寿命が、100歳に到達するだろうと言われているのです。

あくまで予測ですから諸要因によって変わることがあるかもしれませんが、多くの専門家たちも、近い将来に100歳まで伸びることに肯定的です。
今回のテーマである、今25歳くらいの若手も、100歳近くまで生きることを前提に、働き方を考えなければいけない、というわけです。

しかし、私たちの社会は、平均寿命が100歳になる準備はできていません。
日本だけでなくOECD諸国すべて同じような状況ですが、今は、60歳や65歳まで働いて、その先は余命である、という前提で年金システムなどは成立しています。
そのため、政府が高齢者の定義を変えるかどうかの議論をしていますが、いずれは75歳ぐらいから高齢者である、といった時代が訪れることでしょう。私たちは、75歳や80歳くらいまで働くことを真剣に考えるべき時期に来ているのです。

人生の変容

では、働く期間は長くなっているのに1つの仕事を担当している期間が短くなると、人生はどうなっていくのでしょうか。

例えば1つのキャリアを15年で区切るとしたら、75歳まで働くとすれば2回、キャリアが変わります。営業にいたけれど、合理化が進んで仕事がなくなったため、まったく別の仕事をする、といったような機会が2回もあるわけです。
そうすると、営業と次のキャリアの間には、仕事内容に断絶が発生してしまいますから、
学び直しの機会がなければうまくいかなくなるでしょう。

今までのように、幼児教育から考えても3歳から22歳くらいまでの間に学習すれば、あとの人生は大丈夫、ということではなくなってくるでしょう。
働く期間が長くなり、その中でもキャリアや働き方が相当変わる。だから、変わる働き方に対応した学び方に変えなければいけません。

人生の変容

加えると、キャリア間での学び直しだけではなく、後述するように働きながら知識をアップデートしたり、共同体への参画だったりを考えると、学び直しの期間にただ大学や大学院などに行けばよい、という単純な話ではありません。
これからの時代は、人生を通じて、常に学び続けることが必要になってくる、ということも押さえておいてください。

これからの社会動向(3)少子高齢化と人口の減少

今でも日本は、世界一とも言われる少子高齢化社会となっていて、これがさらに進むため、日本社会全体がより厳しい時代になると予測されています。
どのくらい厳しくなるのか、具体的にイメージできるように、今25歳の人が、これからどのような社会を体験していくかをご紹介します。

(参考資料 「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」)

31歳:企業の人件費が高騰

今から6年後、企業の人件費がピークを迎えます。若い世代は300万人くらいで、少子化の影響で少しずつ減っていく一方、団塊ジュニアの世代が、一番人件費の高い50代を迎えるためです。人件費が高いのに若手がいないと言う、企業にとっては今より難しい時代が訪れます。

40歳:空き家率3分の1

人口減少が更に進み、この頃には日本全国で3軒に1軒が空き家となるでしょう。空き家ばかりであれば経済が活性化しませんから、企業はグローバル展開をしていない限り、事業継続が大変厳しい状況となります。

53歳:東京の3分の1が高齢者

東京に住む人のうち3分の1が高齢者になると、自治体の崩壊が始まります。年金がどんどん出ていきますから、経営破綻や合併等が頻繁になると思います。簡単に言うと、企業だけではなく、日本社会全体が大変厳しい時代を迎えます。
しかも、高齢化や人口減少は日本特有の問題で、世界的には人口は増えているでしょうから、日本の国際競争力は、人口の面ではどうしようもなくなります。

以上の観点から、若手社員がこれから迎える将来をまとめると、次のようになります。

    • 技術の進歩により仕事がどんどん変わる。
    • 寿命は伸びているから長い間働く必要がある。
    • 同じ会社か違う会社は別にしても、キャリアもどんどん変えていく必要がある。
    • 企業や自治体の経営は厳しくなるため、個人としてどうやって生き延びていくかを考えなければいけない。

これから必要になる資質

それでは、これだけ厳しい将来を迎える中で、若手社員はどういった能力を持てば未来を切り開いていけるのでしょうか。

この答えが「転移可能な高度一般能力」です。
過去数十年間OECD諸国で議論され、各国とも一致した見解が出ている能力ですが、簡単に言うと、どのような仕事に変わっても持っていける高度な能力になります。

今回は、その中にある「21世紀型スキル」をご紹介します。これは4つのユニットに分かれています。

1つ目が「思考の方法」です。
新しい価値を想像する、物事の本質を見抜く、困難な課題を解決する、不確実な状況で意思決定する、自律的に学び続けるといったことです。
組織はさらにイノベーションを欲するようになるでしょうし、100年学び続けることになりますから、非常に大切な能力です。

2つ目が「仕事の方法」です。
母国語と外国語での意思疎通、話し言葉と書き言葉の使いこなし、チームを束ねてプロジェクトを運営する、といった、国籍にとらわれない高いコミュニケーション力です。
プロジェクトの運営については、異文化・多国籍の人たちが国境を越えてチームをつくるようになるでしょうから、たとえコンフリクトを起こしてでも、アウトプットや結果を出すことが大切です。

3つ目が「仕事の道具」です。
情報技術の可能性と課題を知り、情報機器を使いこなし、知りたい情報を探し出し、情報の価値を評価できるようになる、といったことです。例えば、新しい仕事を始めるときに、人工知能技術を使えることもここに入ります。

4つ目が「世界で暮らすための技術」です。
経済がグローバル化する中で、国境を越えて仕事をすることは常態化していきます。例えば、突然「来週からマレーシアに行って市場開拓してください」と言われることもあるわけですが、ただ仕事をするだけでなく、多様な文化を尊重しながら、他者と共生して地域社会の役割を果たせるような力も必要になってきます。

若手社員に必要な資質をご紹介しましたが、これらのスキルを企業だけで身につけさせることは、極めて難しいと思います。
企業や学校をはじめ、学習に関係している全ての人がこういった目標を共有・連携して、各組織でどのようなことができるかを考えるべき時代になってきたということです。

これからの若手育成の鍵

次に、高次能力を若手社員に身につけさせるために、企業としてどのような教育をすればよいのかについて、お話しします。

(1)プロジェクト学習による高次能力の育成

既に実施されている企業もあるかと思いますが、新規事業創出など、新しい価値創造に直結するプロジェクトに従事させることによって、先ほどの高次能力を伸ばしていきます。

その形の基本は、問題発見・解決型です。
以前は問題解決型と言っていたのですが、最近は問題解決より問題発見のほうが難しいため、重きが置かれるようになっていくでしょう。解決方法は人工知能が考えてくれるようになるかもしれませんが、何が問題なのかを決めることは、人工知能ではまだまだ難しいからです。

実際に進めるにあたって難しいのは、関われる人数が少ないことと、ある程度の投資が必要なことです。
そのため、以下の2つに留意しなければいけません。

1つ目は、「リーダーのステージに合わせて責任の程度を変える」ことです。
実際に新規事業を創出する場合、それに見合うスキルを有している若手リーダーの人数は、少ないと思います。ですから、その限られた人に中核を握らせて、全体の責任を取らせるような形がよいと思います。

一方、入社間もないためスキルはないのだけれど、将来有望だと考えられる若手社員もいることでしょう。そのような人に対しては、リーダーの横に置くような形で、責任の程度を小さくしてあげるとよいと思います。

2つ目は、「失敗を恐れずに挑戦できる環境づくり」です。
前述の将来有望な若手社員の例もそうですが、気軽に挑戦できる環境づくりも大切です。例えば、自動車のガソリンエンジンの部品を作っているメーカーであれば、電気自動車の出現によって、新規事業創出は喫緊の課題ですから、どのような事業が考えられるかをワークショップのような場でやるとよいでしょう。

また、社内コンテストからの事業化も有効です。コンテスト段階では失敗はありませんから、誰でも気軽に挑戦することができます。

「21世紀型スキル」に近いような高度な能力が身につくのは、新規事業創出の経験そのものですから、できるだけ多くの人がその経験をできることが理想です。しかし、たくさんの人に一気に担当させることは非現実的ですから、ワークショップやコンテストなどで、下支えの機会をつくることも大切です。

    (2)越境型学習コミュニティーの構成

    私の研究室出身で、現在産業能率大学の准教授である荒木淳子氏の研究からの引用になりますが、新しいイノベーションを起こせる多くの人は、外で学べるようなコミュニティーを持っていることが多い、という特徴があります。

    普通の従業員であれば、仕事のコミュニティーのほとんどは部署・部門内で完結していますが、リーダーになりそうな人や、なっている人たちは、さまざまな事柄を学ぶための実践共同体、例えば業種や職種を越えての研究会や情報交換会や、全社で展開されるプロジェクトなどに、積極的に参加しています。

    コンプライアンスへの留意は必要ですが、まったく関係ない業種の人たちから話を聞いたら、自分の抱えている問題と非常に似ていて、それをヒントに解決に導いた、といった例をよく聞きます。
    また、新規事業創出は1人では絶対にできませんから、ネットワークづくりのためにも、越境型学習コミュニティーが非常に重要になります。

    ですから組織としては、社内のさまざまな部署メンバーが集う場の創出はもちろんですが、社外と個人をつなげるような働きかけも大事になってくると思います。

    (3)最新の知識へのアップデート

    能力とコミュニティーに加えて、知識も必要です。
    これだけ変わることが常態化している社会では、今まで当たり前だと思っていたことが、5年後には全く変わっていた、ということが頻繁に起こります。そのため、常に最新知識へのアップデートが欠かせません。教科書なども、その内容によっては、発行後すぐに陳腐化してしまう可能性がありますから、最先端の情報を常にフォローする必要があるのです。

    私は今、グローバルオンライン講座(MOOC)の開発と運営をしています。
    東京大学では世界180カ国以上から、累計30万人以上の人たちに受講していただいていますが、一番多い受講層は30代のエンジニアです。つまり、現役で働いているけれど知識をアップデートする必要性を感じているから、大学の最先端の講座を利用します、という人たちです。
    これは東京大学だけの傾向ではありません。当然、エンジニア系の人たちだけでもありません。日本はこれから広まっていくと思いますが、現在でもアメリカを中心に世界中の人たちが、知識のアップデートを始めている現状があります。組織としても、このような最新知識を学べる場への参加を後押しすることが大切になります。

    ワーク・ライフ・ラーニング・バランスへ

    ワーク・ライフ・バランスという言葉がありますが、今までお話ししたとおり、ワークでもライフでも、より多くの学びが必要になります。
    仕事に対してはお話しした通りですが、例えば子育てや介護に従事している人にとっても、学びは必要でしょう。

    今のままでは時間捻出が難しいため、できる限りの生産性向上が前提になりますが、行動時間のうち、学習する時間を最低1割程度確保したほうがよいと思います。最近は週休3日の企業が出てきていますが、3日のうち1日を学習にあてるのが理想かもしれません。つまり、ワーク・ライフ・ラーニング・バランスですね。

    時間を取って、ふさわしい学びを続けることができれば、厳しい時代を迎えても、乗り越えられるような能力が身についてくるのではないかと考えています。


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