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【SANNOフォーラム2017】 教育担当者基礎セミナー ~ 新任教育担当者が最初に学習する講座 ~

企業が存続し成長を続けるために不可欠ともいえる企業内教育。その重要性については、今日十分なコンセンサスがとられつつありますが、その教育担当者の役割が何であり、どうあるべきなのかについては十分な理解があるとはいえないのが現状です。

本校経営管理研究所マネジメント研究センターの主任研究員である中村浩史は、そうした現状に対して「教育」や「学習」の概念規定から議論を進め、人材マネジメントのあり方についても時代に応じて変化していくべきと説きます。

    中村 浩史氏

    学校法人産業能率大学 総合研究所  経営管理研究所 主任研究員 中村 浩史氏

    ダイバーシティ経営が浸透しつつある中で、企業がめざすべき目標や理念をどのように共有していくか。いかにして教育を意味のあるものにしていくか。
    本フォーラムでは、企画から実施、検証まで、概念規定を元にした価値ある企業内研修の作り上げ方について解説します。
    (2017年7月4日 大阪にて行われたフォーラムの内容から編集してお伝えします)

    「教育」と「学習」とは何か

    まずは、教育担当者の役割を考えていきたいと思うのですが、その前にそもそも「教育」とはどういうものか。教育とは、『人間を望ましい状態、学習させるために、心身に意図的に働きかけること』、このように定義できると思います。
    そして、その要件として、望ましい状態がどういう状態か、つまりその人をどうしたいのか、どんな人になってもらいたいのかということがイメージできることが第一に挙げられます。また、こちらから働きかけるというベクトルが必要で、さらに単純に働きかけていればいいだけでなく、受け手側からも何かしらの反応が必要です。これらが教育の要件です。もう一つ、学習という言葉についても定義をしましょう。

    学習とは『経験を通じて生じる認知・行動の比較的長期にわたる好ましい変化』である。その要件は、第一に「経験」です。経験は、自分自身が直接体験したことから発する直接経験と、自分以外の誰かが行っていることを観察して得る間接体験の2つに大きく分けることができると思います。そして、認知と行動が変化するというのは、ものの捉え方、見る範囲が変化するということです。その変化が瞬間ではなく継続的に変化した状態が、学習ということです。
    例えばある経験をしたことによって、その人の仕事に対しての動き方が変わった、行動が変わった状態が長く安定的に続いている。これが学習をしたということになります。

      教育担当者の4つの役割

      「教育」と「学習」という2つの言葉について確認をしましたが、それでは実際に教育担当者の役割というのは、どういうものがあるのか。この役割は2つの次元によって、4つの捉え方ができると思います。
      1つの次元は「時間軸」で表すことができます。より中・長期的な観点でどうしていこうかと考えることと、目の前にあることをどうしていこうかと考えることです。これが「時間軸」です。

      そして、もう1つの次元は「活動の質」です。これは教育活動をどう設計していくかという設計と、その教育活動をどう運営してくのかという運営、設計ー運営という軸になります。この2次元をクロスさせた4つの観点から、教育担当者の役割は分類できます。それぞれを見ていくと、まず一つが、中・長期的な視野で、かつ設計に関わる教育コンサルタントという役割です。
      具体的には組織の経営企画部などがあげられますが、企画をする部署と連携しながら、社内の人材育成を中・長期的にどう考えていくべきかを設計していく役割です。組織全体の人材育成を考える必要があります。

      次に中・長期的な視野で、かつ運用に関わるのが教育マネジャーです。実際の運用にあたり、単年度ごとの教育活動、育成活動をどう計画していくかを他部署と連携しながら考えていく役割があります。
      目の前のことに関して設計に関わる3つめは、実際に社内教育をするときにどういうプログラムを作り、どういう教育を扱っていこうか等というところを考える役割を担う教材開発者です。そして最後はインストラクターで、社内教育のインストラクター、コーチングを務めます。このように4つの役割が教育担当者にはあります。

      変わる人材マネジメントのあり方

      大きく4つの役割に分けられる教育担当者ですが、求められる知識や技術はどういうものなのでしょうか。
      教育担当者だからと言って、教育部門の中だけを見ているというのはNGで、教育担当者は広く社内全体、組織全体を見ていく必要があります。
      人材育成というのは経営戦略の実現に向けたシステムですから、経営戦略はもちろん、組織内のさまざまな部門・機能の業務状況や戦略、人材マネジメントをリンクしていなくてはなりません。
      人材マネジメントというのは、人材を統制しコントロールしていくという管理的なものではなく、社内にいる人たちが自律的に、自主的に動き、良い形でそれぞれの力を発揮できるようにはどうしたらいいのかを考えることが重要です。

      人材は経営にとって最も大切な資源ですから、個人を最大限尊重しながらマネジメントをしていく。その結果、本人の自発性や自主性が企業の施策と連動していくというのが理想的な形です。それが本人にとってもできるだけ内発的動機づいた方が良いのですが、もちろん100%内発的に動機づくのは難しいところもあります。しかしながら、1人1人の志向ややる気などを認めて、または引き出しながらマネジメントしていくというのが大切です。

        この人材マネジメントには、採用、評価・処遇、配置・再配置、人材育成という4つの捉え方があるのですが、その中でも、人材教育というのが以前と比べて難しくなってきたと言われています。
        その理由の一つとして、環境や組織そのものの状況が以前の職場状況と変わってきたということがあげられます。ですから、これまでのやり方がそのまま通用するかというとそう言い切れなくなってきたところがあります。例えば、戦略行動に関して言うと、これまではオペレーション中心で、内部資源を活用し、応用や開発の研究を行っていたことが、開発戦略をより重視し、アウトソースを含めた外部資源を活用しながら基礎研究を大事にするという方向に変わってきています。意志決定もトップダウンの一方向型の意志決定だったものが、トップダウン・ボトムアップの相互交流が頻繁におこなれるようになってきています。

        そして人的資源も、同質化への圧力や強固な集団主義から、さまざまな価値観や考え方を持った人々を尊重し、いかに良い形で活用していくかと形に変わってきました。多くの変化が見受けられるのですが、しかしながら原理・原則というのはどの時代においても不変であります。そこで、人材育成の原理原則について考えてみましょう。

        企業内人材育成の3本柱

        よく人材育成には、OJT、OFF-JT、そして自己啓発(SD)の3つの柱があると言われます。ご存じの方が多いとは思いますが、改めて説明すると現場で先輩や上司が部下、後輩を指導していくというのがOJT。OFF-JTはセミナーや講習会といった集合研修、自己啓発は従業員が自ら学ぼうとすることで例えば本を購入して読むというものも含まれます。この中で何が中心かと言うと、やはりOJTです。現場での実務を通して良い形で育っていく、それが中心です。

          ただ、現場での指導・育成というのは月日が長くなってくると個人的な慣れが出てくると言われています。慣れてくるとその職場なりのやり方や考え方は学べるけれども、その職場以外の考え方、つまり外ではどんなことをやっているかや次のステップでどんなことが期待されているのか等を知る機会が少なくなってきます。そういうときに、気づきも含めて集合型の研修であるOFF-JTを実施したり、自分の課題に適した勉強をするように誘導し、日常の役割遂行だけではわからない部分をカバーする施策を入れていく、機会を作っていくということが有効になってきます。

          人材育成を行うときに考えなくてはならないのが「体系」です。社内の人材育成がそれぞれの部門でばらばらに行われていてはせっかくの教育も無駄になってしまいますから、社内全体の教育の仕組みを系統立てて統一して考えていく必要があります。それが教育「体系」ですが、体系を作っていくためには各部門の教育に共通するルールや基準を作り、かつそれぞれの教育や要素がどう関係しあい、どうしてここに位置づいているのかをきちんと説明できることが要件となります。

          社内全体を見ながら教育を計画していくときに役立つのが全体に関わる教育体系というものです。年度計画で実施し、不具合や人員の構成が変わった、外部環境が変化した等があれば体系を見直し変更していけばいいわけです。また、ある程度長い時間教育をしていくうちに、そもそもその教育が何のために行われているのかという目的やどこと繋がっているかという位置づけがわからなくなったという企業がときどき見受けられます。そういう場合にも、このような教育体系があれば、もう一度全体を見ながら一つ一つの人材教育の施策が整理できます。

          最初に「教育」という言葉の定義を確認しましたが、似たような言葉で「育成」というものがあります。育成とは『育て上げること、育てて立派にすること』、こんな意味合いがあると言われています。つまり、何かしらの教育的な働きかけをした上で、きちんと最後まで育てあげていくということです。「教育」という言葉より「育成」の方が広義であると解釈できると思います。「育成」の類語には、植える、栽培する、養う、養成というものが挙げられますが、これはよく植物に使われる言葉です。

            植物は1日でそんなに大きく変化しません。同じように人材育成も、しっかりと根付かせていくには時間をかけて育てあげていく必要があります。1つ例を出しますと、管理職を育成する、ということを考えてみましょう。 良い管理者を育てていくときに、管理職になったその瞬間から教育をしていけばいいのでしょうか。答えはNOです。育成という観点から言うと、ある程度時間の幅が必要です。

            管理者になる前段階、さらに前段階から少しずつなんらかの施策や役割、きっかけを与えていくことも大事であり、そして自身の経験に偏らないように集合研修などで外部と交流しながらマネジメントのあり方を確認してもらう。
            そういう時間をかけた育成が大切だと思います。そこには経営戦略が密接に関係してきます。3年後、あるいは10年後に会社として目指す姿があって、それに基づいた人材を育成していく必要があるからです。経営戦略があって人材戦略があるということです。

            教育メニューの企画・検討で大事な3原則

            社員から「なぜこの研修をやるのですか?」と問われて明確に答えられない研修、流行を追っただけで自組織に合わない研修、社内のある限定的な場面だけを見て全社課題と判断し実情とは離れた研修、そういう研修を行っている企業がときどき見受けられます。研修のメニューを計画するときに大事な原則があります。それは「独自性の確保」「系統性の確保」「連係性の確保」、この3つです。まず独自性の確保というのは、例えば他人が着ている服を見ていいなと思っても自分に合うとは限りません。同様に、自社に合った研修をその都度その都度考えていくということが必要だということです。次に系統性の確保ですが、これは例えば階層別で研修をする際に上層で実施している研修と下層で実施している研修に系統性、整合性がとれているかどうかです。
            そして、連係性というのは、1つの階層で複数の教育を実施するとなったときに、研修ごとの連係性や役割分担ができているかどうかや研修と人事システムがきちんと連動しているかどうか等です。これらのことを意識しながら設計し、教育全体を整理整頓していくということがとても大事です。

            研修メニューのつくり方

            独自性を確保しながら系統性も、連係性も確保した研修メニューを作るためには、まず人材像を考えます。最初に定義した「教育」という言葉の要件に望ましい状態がイメージできることがあると言いましたが、人材育成はまずどんな人になってもらいたいのかを設定することが大事になってきます。

            理念やビジョン、あるいは経営計画など、その組織ごとによって異なりますが、企業のトップの方針などを参考にして中・長期的な人材像を設定する。それと併せて、自社の状況、育成環境や従業員の相対的な能力レベルなど現在の状況を把握し、教育ニーズを確認しておくことも必要です。人材像としてはこういう人になってもらいたい、一方で現状はこうだと、ここにギャップが生じているわけです。このギャップは、課題です。

              この課題を明確にしていくことが社内での人材育成の内容を作り上げていく途中のステップになっているのです。これは有名な考え方ですが、ハーバード大学の教授であるL.カッツのスキル概念図というものがあります。人のスキルを大きく3つに分けています。

              1つはテクニカルスキル。実務の仕事をしていくときに求められるスキルです。2つ目はヒューマンスキルで、他者とのやりとりをしていくときに必要なスキルです。3つ目はコンセプチャルスキルと言って、先を考える、将来を考えるスキルです。これらのスキルは階層によってそれぞれ期待される割合が異なってきます。そういうことを念頭に置いて階層別の教育内容を設定することが大事です。

              また、自社においてどんな能力を期待するかというときに、初級クラス、中級クラス、上級クラスでどのレベルまでできるようになって欲しいのかが一覧でわかるのが能力マップというものです。これができあがっていると、この後にお話しますが、教育手段を当て込みやすくなります。例えば、中級クラスにはこういう人材が欲しいとなったときに、現状はこういう状態だから、このギャップを埋めるためにこういう能力を開発したいという話になります。

                その能力も中級クラスだとこのくらいのレベルが必要だから、手段として、まずOJTとして現場でこういう展開をお願いしよう、それから集合研修にはこういう役割を担ってもらい、自己啓発ではこんなことをやってもらおうというそれぞれの具体的な手段の検討に入っていけるということです。
                これは全社的な教育だけではなく、各部門の教育でも同じように捉えて問題ありません。いまは特にダイバーシティという言葉も浸透してきました。例えば女性活躍推進をテーマにしたときに、自社としてどのような活躍を女性に期待するかどうか考える、と同時にこれまでの社内の風土は変えなくていいのかどうかというところも併せて検討する必要があります。

                研修実施のポイント

                さて、いままで教育とは何かということから教育プランを立てるときのポイントまでをお話しました。次はPlan、Do、Seeで言うと、Doにあたりますが、実施のポイントから続けていきたいと思います。

                受講者の方にもお伺いしましたが、現場の実務のところでもいくつかポイントがあります。配付資料の確認、各種機器の動作確認、会場やホテル、食事の予約、会場レイアウト、受付・出欠の確認、オリエンテーションの実施など、実務的には実施当日までに準備、確認しておくことは多くあります。こういった細かなところを見ていくのも大切ですが、皆さんに意識しておいてもらいたいのは、【目的】です。

                研修を実施することだけが目的となっていないかというのを再確認してほしいと思います。なぜこの研修を行うのか、なぜこの教育が重要なのかという目的です。この意識がないとルーティン化してしまうからです。目的があってのルーティン化であれば問題はないのですが、目的を見失ったままで教育をし続けても意味がありません。目的がないまま続けたけれども、今の状況からするとこの教育は求める人材像に合致していないということもあり得るわけですから、必要があれば、例えば3年実施した時点で終了するというように、教育の期限をきることも考えた方が良いです。

                研修効果を検証する

                最後にSee、検証について考えます。研修が終了したら、その検証が必要です。まずは、カーク・パトリックさんのモデルを参考に表現したものです。

                最初に「反応・満足度」があります。研修全体の満足度、それから、学習内容、事前課題、講師、教材、学習スタイルなど個々に区切って聞いてもいいと思います。この満足度は、参加した本人がどう感じたかという主観的な感想です。あるいは仕事に生かせそうかといった仕事との関連性を確認しても良いです。そういった評価・情報を今後の教育に活かしていくのは大変有効だと思います。

                次に「学習到達度」です。満足しているだけでなく、実際に学習がどの程度進んだのかを筆記試験やレポートなどによって確認します。知識のインプットがきちんとされているかは暗記できているかどうかで分かりますし、例えばマネジメントをテーマとした場合などはマネジメントという言葉を知っているかどうかではなく、マネジメントとはどういうものかという自分なりの回答があると思います。そういうところを確認しておこうということです。

                  だいたいはこのあたりまでの検証、評価が研修中や研修直後に実施できるため一般的かと思いますが、さらにレベルを上げた検証になると、「行動変容度」の確認が加わります。
                  例えば交渉力や傾聴力、質問力などのスキルに関して、受講者との面接や上司へのインタビューなどで求められる行動をとっているかが分かると思います。研修後1~3か月経って、例えば研修でアクションプランを作ったとしたら、そのプランのどの程度まで実行できているかということを聞いてもいいと思います。上司には実際に現場で行動に変化が見られているか、どんな変化があったのかなど、アンケートやメールで確認するという方法もあります。

                  最後にレベル4の「成果到達度」です。研修受講後に成果が上がったかどうかの判断ですが、これは非常に難しいと思います。例えば営業であれば、研修参加後に営業数字が伸びたとしても、それが本当に研修の効果なのかどうかはなかなか判断がつかないと思います。そのときは、代理指標・先行指標として、別の側面を見て判断するという手段があります。例えば、後輩のOJT指導というテーマで研修があったとしたら、後輩が成長したかどうかの判断は難しい。
                  けれども職場の中にOJTに関わる資料ができた、仕組みができたなど何かしらOJTに関する変化があれば、それを成果として考えてもいいということです。
                  ほかにも、研修後にはこうなってほしい、こういう知識を獲得して欲しいと教育上の目標が明確にある場合は、その目標にどれだけ近づいたかチェックするツールを作ってもいいと思います。

                  インストラクターに求められる技術とは

                  ご自身でインストラクターをしているという方には、講師に求められる4つの技術というのがあるのも知っておいてもらいたいと思います。

                  最初が「背景理論」です。
                  例えばマネジメントやリーダーシップというテーマで研修を実施する際には、マネジメントやリーダーシップに関してどんな理論があるのかという背景を知っておくと研修が進めやすいということがあります。
                  次が教育学習理論。これはどんな研修であっても、人が学習するというのはどういうことなのか、こんな技法を使用するとこんな研修効果が創出されるなどというような共通の教育学習に対する考え方です。

                    3つ目が実際の現場の方々の立場を理解しておく必要がある、ということで「現場感覚」。最後は実際のインストラクション技術になります。

                    さて、企業がめざすべき目標や理念をどのように共有し、いかにして教育を意味のあるものにしていくかについてお話をしてまいりました。
                    今回の話しが何かしらのお役に立てばとおもいます。
                    皆様のご活躍をお祈りしております。

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