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コンプライアンス推進活動を一歩進める“共通認識”の醸成 【第2回コンプライアンス推進に向けた方向性 その1:統制型アプローチ】

 第1回目はコンプライアンス推進を阻む問題とその背景について取り上げました。第2回目は、その問題解決に向けての方向性の一つ、「統制型アプローチ」について考えていきたいと思います。
 
 コンプライアンスの推進には、「統制型アプローチ」と「共有・共創型アプローチ」があります。
「統制型アプローチ」(欧米型)は1980年代よりアメリカで発達し、2000年以降日本で浸透してきたトップダウン方式です。それに対して、「共有・共創型アプローチ」(日本型)は、上からの指示だけでなく、現場からも意見し、ミドルアップダウンで意思決定をしていくものです。

統制型アプローチにおける2つの概念

 統制型アプローチの取り組み例を【表1】にまとめましたが、取締役や監査役の機能を強化し、企業行動憲章を作る、教育を行うなど、仕組みをつくることが核になります。ちなみに、経団連のホームページでは行動憲章の作り方が紹介されています。

          【表1】統制型アプローチの取り組み例

【表1】統制型アプローチの取り組み例

 統制型アプローチには、大事な概念が2つあります。
 ひとつは「職務分掌(職務の分担)」です。業務を一人に任せてしまうと不祥事が起きる可能性が高まりますので、業務を2人以上で担当し互いに検証しあう仕組み(相互牽制)を作るのです。例えば、業務の相互チェックやローテーション人事などがあります。
 もうひとつは、「モニタリング(監視体制)」です。例えば規則がきちんと守られているかを定期的にモニタリング、サンプリングしてチェックします。報告は正確か、抜け漏れはないか等、結果だけでなくプロセスもモニタリングし、経営者がトップダウンで現場を管理・監督していきます。

統制型アプローチを機能させるための役割

 統制型をうまく機能させるためには、経営層、管理職層(施策推進担当部署)、現場がそれぞれの役割を果たす必要があります。

 【経営層】
  ・経営を委任されたプロとしての責務を理解する(マネジメント)
  ・社内に潜むリスクを察知して把握する(リスク感度)
  ・変革に向けて具体的なビジョンや方向性を示す(変革へのコミットメント)
 【管理職層】
  ・経営者のビジョン・方針をメンバーが納得するように伝える
  ・現場のジレンマを理解し、現場に潜むリスクを敏感に察知し、仕組みを落とし込む
 【現場】
  ・自分自身の行動の内省と改善を行う
  ・仕事の進め方などの改善提案を行う

 トップダウンによる方針展開には、施策の推進担当部署による現場へのサポートが欠かせません。「わが社にはこのようなリスクがあるから、このような仕組みを作る」というトップの力強さは、時に受け止める現場にジレンマを生みます。その現場のジレンマを理解し、現場に潜むリスクを感知して仕組みに落とし込めるように、推進担当部署のサポートがスムーズに行なわれれば、トップから現場までがうまくつながっていくと言えます【図1】。トップの思い・方針が現場の隅々まで伝わり、現場で把握された生々しいリスクがトップにまで情報共有されているという、非常に望ましい状態になるのです。

 例えば昨今、様々な企業で女性活躍推進を経営戦略として位置づけ、女性管理職比率を高める目標が掲げられ、「働き方改革」で長時間労働の是正が謳われるケースがあります。
 しかし、もし現場がそれらの方針の本質を理解しておらず、逆にその取り組みを負荷が掛かる活動としてのみとらえている場合には、様々なコンフリクトが起こりやすくなると言えるでしょう。
 現場の人間は機械ではありませんし、言われたことだけをやっていればよいという単純なものではありません。「統制型アプローチ」を本当に機能させるためには、現場の主体性を残しつつ、いかにトップダウンの指示を隅々まで普及させるかが大きなポイントになります。施策の推進担当部署としては、現場が主体的にコンプライアンスを推進していけるように、現場自体のリスク感度が高まるようにフォローしていくことがとても大切です。

      【図1】「統制型アプローチ」を機能させるためのポイント

【図1】「統制型アプローチ」を機能させるためのポイント

トップによる強力なメッセージが伝わっているか

 たとえば上場準備会社を考えてみましょう。
 統制型によるアプローチがよく機能している場合、トップが強力なメッセージを発信し続け、それを現場が受け取り、みんなで頑張ろうという機運があります。そのような機運がある場合、大抵うまく上場に至ります。
 ところが残念ながら上場まで至らなかった企業は、トップ、施策推進担当部署、現場が一体になっておらず、バラバラ感が否めません。トップだけが張り切っていて、推進担当部署はトップに言われるがまま、十分な検討を行なわず仕組みづくりをしてしまう状況、さらに何を指示されているのか見当もつかない現場は全くついていけてないという状況に陥ります。そういう企業はたとえ上場できたとしても、結果的に上場廃止になってしまうことも多いのです。

 2015年には「コーポレートガバナンスコード」※が産業界に導入されました。一般的には社外取締役を一定数置くことなどに注目が集まりがちですが、コーポレートガバナンスコードが本当に問うているのは、トップが世の中の流れをしっかり受け止めて、組織に本気でメッセージを発信できているかどうかということなのです。
 統制型アプローチをうまく機能させるためには、トップが強力なメッセージを発信し続け、その思いや方針が現場の隅々まで伝わり浸透し連携して、全体がひとつにつながっていることがポイントとなります。

 今回はコンプライアンス推進に向けた方向性の一つ、統制型アプローチについて、その考え方、組織における役割、トップから現場まで方針が浸透し連係していることの重要性についてお話ししました。
 次回は、コンプライアンス推進のためのもう1つの方向性である、「共有・共創型アプローチ」をご紹介します。

コーポレートガバナンスコード:金融庁と東京証券取引所により、株主の権利や取締役会の役割、役員報酬のあり方など、上場企業が守るべき行動規範を網羅したもの(2015年3月)。法的な強制力はないが、「Comply or Explain(同意せよ、さもなくば説明せよ)」との原則に基づき、上場企業はコードに同意するか、しない場合はその理由を投資家に説明するよう求められる。


(学校法人産業能率大学 経営管理研究所 主任研究員 赤松育子)

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連載 テーマ 公開日(予定)
コンプライアンス推進活動を一歩進める“共通認識”の醸成 2017年3月6日
第1回 コンプライアンス推進を阻む問題や背景とはなにか 2017年3月6日
第2回 コンプライアンス推進に向けた方向性
その1:統制型アプローチ
2017年3月15日
第3回
(最終回)
コンプライアンス推進に向けた方向性
その2:共有・共創型アプローチ
2017年3月28日
テーマは若干変更することがあります。予めご了承ください。

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