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データで読み解く “人材開発の過去、現在、未来” 【第2回 人材開発の主体は個人なのか組織なのか】

はじめに

 終身雇用の崩壊や個人の価値観の多様化、情報収集コストの低減が進む中、個人と組織の間でパワーシフトが起きているといわれています。第2回は、こうした個人と組織のパワーバランスの変化が、人材開発活動においても見られるのかどうかを確認してみたいと思います。

人材開発の主体は「組織責任」が多数派

 人材開発の主体について、「本人責任なのか、組織責任なのか」をたずねた(グラフ1)。2008年は「組織責任」との回答が56.7%で「本人責任」との回答43.3%を大幅に上回っています。しかし、2010年は「本人責任」との回答が増えて「組織責任」との回答を大きく上回ります。それが2015年になると「組織責任」との回答が大きく増えて59.7%に。人材開発の主体は「組織責任」であるという考え方が再び多数派になりつつあることがわかります。

人材開発の主体

継続して、「選抜型重視」よりも「底上げ型重視」が主流

 次に、教育投資のスタンスとして「選抜型の育成を重視しているのか、底上げ型の育成を重視しているのか」をたずねたところ(グラフ2)、2010年、2015年と一貫して「底上げ型重視」との回答が「選抜型重視」との回答の倍近くありました。特定の層ではなく、多くの社員の能力向上に重きを置いている企業が大半であることがうかがえます。

教育投資のスタンス

約7割の企業が「一律型中心」との回答

 さらに、教育の形態について「選択型中心なのか、一律型中心なのか」をたずねたところ(グラフ3)、約7割の企業が「一律型中心」であると回答しています。多くの企業において、社員が自分自身の意思によって選択する教育よりも、企業が決めた教育が重視されていることがわかります。

教育の形態

かつての関係性に逆戻り!?

 こうした「組織責任」、「底上げ型重視」、「一律型中心」といった回答を併せ見ると、企業は、組織の論理による、戦略的人材開発活動を展開しようという意図を強めてきているのではないかと推察されます。そして、それは一見すると、かつてのような「組織>個人」といった支配・従属関係に逆戻りしてしまったようにも思えます。果たして本当に旧来の関係性に逆戻りしてしまったのでしょうか。

組織>個人なのか、組織=個人なのか、はたまた組織<個人なのか

 ここで、人材開発の主体は「本人責任なのか、組織責任なのか」という質問について、もう少し細かく回答の内訳を見てみたいと思います(グラフ4)。
 まず、人材開発の主体が「組織責任」との回答を見てみると、2008年には11.3%と1割を超えていますが、2010年は7.5%に減少しています。そして、2015年には8.5%に微増しています。
 これに対して、「やや組織責任」との回答は、2008年から2010年にかけて45.5%から36.7%と一旦大幅に減少したものの、2015年には再び51.2%に増えて2008年の水準を上回っています。つまり、「組織責任」よりも「やや組織責任」との回答の伸び幅の方が圧倒的に大きいことがわかります。

人材開発の主体(詳細)

組織=個人の兆し

 ここから先は推察になりますが、「組織責任」ではなく、「やや組織責任」とした回答者は、「ある程度は個人の責任や意思を含みつつも、どちらかと言えば組織責任」というニュアンスで回答しているのではないかと考えます。
 これはつまり、戦略的に組織主導で人材開発活動を行うが、かつてのような会社からの一方的な押し付けではなく、ある程度個人の主体性や責任、意思も認めた上で活動を展開していることの表れといえるのではないでしょうか。
 したがって、これまでのような「組織>個人」という支配・従属関係から、「組織=個人」というパートナー関係に移行しつつある兆候が、人材開発活動においても見受けられるといえるのではないでしょうか。

人材開発活動の場面における、組織と個人の関係性の変化の意味

 こうした人材開発活動の場面における組織と個人の関係性の変化には、非常に大きな意味があると思われます。なぜなら、組織と個人が対等な関係になると、これまでのように個人が組織に過度に依存することは許されなくなり、組織は個人に対して等価なアウトプットを要求するようになるからです。
 つまり、組織が個人の主体性や責任、意思も認めた上で教育内容を設計するようになると、その分、個人に対して能力アップして職責を確実に果たすことを強く要求するようになることが予想されます。一方で、個人のニーズに合わない、いわゆる「役に立たない」教育を提供し続けるような組織であれば、個人は職責を果たすことなく、やがて組織から去っていくでしょう。
 今後、人材開発活動においても、「組織=個人」というパートナー関係への移行は、徐々に進んでいくものと思われます。支配・従属関係から脱却し、等価なアウトプットを交換し合うパートナーとしてWin-Winな関係を構築する。そうした関係性を構築することができた企業は、より大きな発展が期待できるようになると思われます。
 本学では、今後も定期的に調査を実施し、人材開発活動における個人と組織の関係性の変化を継続的にご報告してまいりたいと思います。

 次回は、人材育成の中心をになうのはOJTなのかOff-JTなのかについて考えてみたいと思います。


(学校法人産業能率大学 総合研究所 経営管理研究所 組織測定研究センター
プロジェクト・リーダー 田島 尚子)

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連載 テーマ 公開日(予定)
データで読み解く “人材開発の過去、現在、未来” 連載TOP 2016年8月19日
第1回 教育は投資かコストか 2016年8月19日
第2回 人材開発の主体は個人なのか組織なのか 2016年10月20日
第3回 人材育成の中心を担うのはOJTなのかOff-JTなのか 2016年12月26日
第4回 管理職に新たに求められる役割とは 2017年4月5日
第5回
(最終回)
人材開発部門のこれまでとこれから 2017年5月26日
テーマは若干変更することがあります。予めご了承ください。
著者の所属・肩書きは掲載当時のものです。

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