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【SANNOエグゼクティブマガジン】『教育・研修費用の投資効果』を問う

SANNO Executive Magazine コラム【経営の視点】

1.研修するのは「当たり前」?

 先日1970年代の教育関連の文献を読んでいると、『・・・ついに自社でも社員研修の導入が決まったということで、社員は手を取り合って喜び合った・・・』という記述があり、少し驚いた。最近では、研修冒頭で受講生に“今回の研修の参加動機”について話をしてもらうと、「(事務局から)呼ばれたから仕方なく来たが・・・」と語り始める人が多いからだ。これは企業が人材育成に取り組むことが定着した証でもあり、喜ばしいことではある。しかし経営者・管理者から見れば、折角研修費用と人件費を割いて行っている研修が日用品(コモディティ)のようにありふれたものになり、感動も意義付けも薄くなってしまっているのは空しく感じることだろう。

 以上の背景からか、「上司から“実施した研修の投資効果はいくらか”という質問を受けて困っている」という相談をよく受ける。ある上場企業の人事担当者は答えに窮し、株価を調べたら研修後にたまたま上がっていたのでそれを報告しようとした、という話を聞いたこともある(賢明な皆様には解説するまでもいが、1本の研修と株価変動は全く無関係である)。これらの話は、聞く分には滑稽で面白くはあるが、答える方としては切実なテーマである。企業は研修の効果についてどのように捉えるべきだろうか。

2.業績と研修の関係

 ここで本学が長年実施している『研修効果測定』セミナーのテキストから、参考になる情報をご紹介したい。このセミナーは研修実施後に行う効果測定に関する基礎理論と把握手法を提供する内容になっている。

 以下の図は、本学が実際に多くの企業の協力を得てアンケート調査とインタビューを行い、企業業績と人的資源管理の関係について調べた実態調査を基に作成したものである。統計的な分析がなされているので数字が表示されているが、詳細は専門書に譲るとして、その意味するところにご注目いただきたい。

人的資源管理と企業実績の関係

(学)産能大学総合研究所  日本ヒューマンリソース・マネジメントに関する調査研究

まず、この調査の中で我々が人的資源に行っている働きかけは、以下の3点である。
 ①人的資源計画(Human Resource Planning )…人材の採用・選抜、組織や職務の設計
 ②人的資源活用(Human Resource Utilization )…配置やローテーション、人事考課
 ③人的資源開発(Human Resource Development )…教育研修、自己啓発支援

そして我々が業績と呼んでいるものは、以下の2つである。
 ④売上高伸び率・・・経年での売上の増加率
 ⑤利益(額)伸び率・・・経年での利益の増加率

このように整理すると、“研修の投資効果を問う”ということは、この図においては「HRD(人的資源開発)」と売上・利益の関係を説明する」という内容に置き換わるが、どのように見えるだろうか?

 実態調査から作られたこの図で注目していただきたいのは、2つの点である。まず1点目は『企業の業績(④⑤)と、人的資源開発()は大きく離れており、直接的関係がそもそも存在しない』という事実である。業績と人材の関係は「HRU(人的資源活用)」という点で接点を持っているに過ぎず、研修などで能力開発された人材が存在してもその人材が事業に有効に活用されていなければ業績に影響はいということである。

 さらに2点目は『企業の業績(④⑤)と人材に関する事項(①②③)は、関係が強くない(点線で連結=5%水準で優位=関係が存在するが弱い)』ということである。日常感覚で考えても、業績に強い影響を与える要素は、例えば自社の研究開発の成果や為替変動などの外部環境要因など、他に多く存在することは想像に難くい。このような前提を無視して業績と研修の関係を考察しても、適切な結論は出てこないことを予め念頭に置くべきだろう。

3.答えの無い問いよりも、研修の効果を“高める工夫”をすべき

 以上のことから、「研修の投資効果」という“答えのい問い”を問うことは不毛と思われる。しかし資源を投入した以上、研修が経営や業務にプラスの影響があったか検証したい要求があることは推察できる。このような場合は、検証に時間を割くよりもむしろ研修の効果を “高める工夫”をするべきではないだろうか。

 具体的には、以下の4つの視点で研修などの人的資源開発を見直すことをお勧めしたい。

 まず1点目は「研修の企画設計品質を上げる」ということである。研修の企画プロセスは、実は経営戦略の策定によく似た進行を取る。つまり詳細な情報分析と高い見識から生まれる研修企画は高い品質を担保するのに役立つはずである。

 2点目は「受講者を動機付ける」ということが重要になる。同じ研修に参加しても、事前に研修への参加意義を説明したり、期待を強く伝えられている受講生の方が研修への取り組みが前向きになり学習効果が上がることが知られている。

 3点目は「イシュー(業務課題)を取り上げる」ことが有効になる。研修と実務の結びつきが希薄になれば、研修は余暇と変わらなくなってしまう。研修に日常の業務の困りごとを持ち込み、研修終了時にその解決を持ち帰ることが理想である。

 最後に4点目として「フォローアップのしくみを作る」ことが重要である。“研修を業務に活かしてほしい”と研修の結びに事務局が言うシーンは多いが、むしろ「活かしていますか?」「行動計画の進捗はいかがですか?」という“研修の活用を伴走するしくみ”を考えた方が、実際の変化を作り出すには有効だろう。

 現代は商品もサービスも過剰に提供されていることは否めない。研修というサービスも同様であろう。しかしそれは研修が完璧な形で実施されているということを意味していない。この記事を参考に、自社の研修の運用の可能性を再考していただければ幸いである。

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