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セカンドキャリアに見る自分らしさ ~仕事を通じた自分らしさの確立~

SANNO Executive Magazine コラム【経営の視点】

「先生、質問の意味が分かりません!」

数年前に、某企業で55歳の役職定年者を対象とした「セカンドキャリア研修」を担当した経験があります。
役職が外される一方、まだ組織の中で5~10年間仕事を遂行していく必要があり、再度自分のキャリアを考えさせ、モチベーションを上げたいという企業ニーズでした。
そのニーズは頭では理解できるものの、受講生の立場からすると「今更、何をやらせるんだ」という、冷めた空気の中でスタートした研修でした。

はじめに、これまでの数十年のキャリアを棚卸しし、メンバー間でその内容を共有する演習を実施しました。
その演習が終わった後、私は「自分らしいキャリアを歩んでくることができましたか?」という質問を投げかけました。
少し沈黙があった後、ある強面の受講生が「先生、質問の意味が分かりません!」と発言してきました。これまで会社のために一生懸命働いてきて、自分らしさも何もないでしょう、といった趣旨の発言でした。
研修の場はさらに重苦しい雰囲気になり、冷や汗が凍りついてしまうくらいの冷たい視線を感じながら、次のような説得を試みました。

私が公私ともにお世話になった恩人が、50代後半で大病を患い他界された話を紹介します。
その人をお見舞いした際、何気ない会話の中でポロッとつぶやいた発言が、「もっと自分らしく生きれば良かった・・・」というものです。
この言葉は私の人生観に衝撃を与えましたが、私はいまだに「自分らしさ」とは何かを定義することができません。ただ、現時点における私なりの答えは、「自分が大切にしている仕事観は何か、それを具現化しようとしているか」「自分の強みが何で、それをどのように活かしていくのか」「将来、自分は何をやりたいのか」「自分はどのように社会へ関わっていくのか」を考えることではないかというものです。
これが今回の研修で皆さんに考えていただきたいことなのです。役職を外されることは見方を変えれば、過大な責任から開放される、本来やりたかったことができる、といったポジティブな意味づけもできます。
ぜひ、この研修で「自分らしさ」とは何であるかを改めて考えるきっかけにしてほしいのです・・・。

事前にしっかり準備していなかったので、論理的な説明はできなかった記憶がありますが、自分なりに想いを込めて説得したつもりです。
嬉しかったことは、その強面の受講生の表情が少し和らぎ、場の空気が少し良くなったことです。

自分らしさを見失ったキャリア

「アイデンティティー」という言葉がありますが、コーポレートアイデンティティー(CI)、IDカードなど、実は身近なところで活用されている言葉です。
このアイデンティティーという概念を発達心理学の側面から提唱したのは、心理学者のエリクソン,E.H.ですが、アイデンティティーとは「自分とは何者か、自分の由来、現在、そして未来はどのようになっていくのか」についての答えを見いだそうとする心の動きであるとし、この問いに答えることが自己を確立することであるとしています。
エリクソンが提唱した心理的・社会的発達課題の中では、「青年期」(13歳~22歳)の発達課題として、アイデンティティーの確立を挙げています。
確かに、多感な青年期は、進学、友情、恋愛など思い悩む時期であり、自分とは何者であるかを内省する時期であるかもしれません。

ただし、私自身は、青年期に自分のことが見えるようになったとは全く思いませんし、研修の受講生に質問すると同じような回答が返ってきます。
現実的には、青年期にアイデンティティーが確立されることは難しいのではないかと思っています。実態としては、社会の中で仕事をしながら、もがきながら耐えながら自分のことが少しずつ見えてくるものではないでしょうか。
その自分らしさのようなものを、仕事という貢献活動の中で再試行し、さらに「らしさ」を醸成していくものではないかと考えます。

しかし、昨今感じる問題意識は、冒頭の研修生のみならず、様々な年代層の方々が「自分らしさを見失っているのではないか」というものです。
具体的には、自分のキャリア観を持っていない、個性が際立っていない、独自性のある発想が出てこない、他者の意見に流される、重視する仕事の軸が見えない、将来のキャリアビジョンがかけないなどです。
つまり、「何のために働くのか」という意味づけができず、組織の中で仕事をしていくことの無力感を表現する受講生が増えてきました。一言で言えば、「自分らしさを見失ったキャリア」に出会うことが多いのです。 

仕事を通じた自分らしさの確立

このような状況の中で、「仕事を通じて、自分らしさを確立し、それを社会のために活かしていく」という私なりの想いを今後も受講生にぶつけていきたいと考えています。そのための支援や指導を微力ではありますが継続していきたいと思っています。

もちろん、自分らしさを確立し、それを社会のために活かしていく主体は、当然ながらその人自身にあります。
しかし、その人を取り巻く環境要因(組織、制度、マネジメントなど)の影響が大きいことも事実です。
企業側が謳う人材育成の理念・方針などに、「自ら考え自ら行動」「キャリア自律」「主体性の発揮」といった言葉をよく見受けます。これらをただのスローガンに終わらせず、現場で本当に実践していこうとする言行一致のマネジメントが求められています。
言い換えれば、企業側の「本気度が問われている」のです。

企業という組織の中で、自分らしさを発揮することがいかに難しいことであるかは、本マガジンを読まれている経営層、経営幹部層の方々が一番承知されていることだと思います。
組織の論理や現実の厳しさを否定するつもりはありませんが、一方で、従業員一人一人が一度しかない人生を、同じ組織の中で各々の仕事に懸命に取り組んでいる、という忘れがちな事実を常に理解、受容し、バランスの取れたマネジメントを実施されることを期待します。


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