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人を育てるとはどういうことか~優秀なプレイヤーは優秀な指導者になれるのか~社会動向から世の中を見る

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テニスの世界から学ぶ

全米オープン(テニスの世界四大大会の一つ)準優勝以来注目を集めているプロテニスプレイヤー錦織圭選手が2014年10月5日、楽天オープンで優勝を遂げました。今季に入りツアー4勝目、自身初の2週連続の優勝となりました。その後、世界ランキングを5位まで上げ、年間成績の上位8名で戦われる「ATPワールドツアー・ファイナル」にアジア人として初めて出場し、準決勝にまで進むという快挙を成し遂げました。

錦織選手はなぜ勝てるようになったのか

錦織選手は元々注目を集めていた選手でしたが、なぜここ最近勝てるようになったのでしょうか。多くの記事の中で、錦織選手が“勝てるようになった理由”を取り上げています。その一つが、マイケル・チャン氏の存在です。マイケル・チャン氏は現役時代、1989年に全仏オープン(テニスの世界四大大会の一つ)を最年少記録で制し、世界ランキングでは最高2位まで上り詰めた選手でした。

では、プレイヤーとして一流であったマイケル・チャン氏が、指導者として成功している要因はどこにあるのでしょうか。企業においてもプレイヤーとして優秀な人材が管理職に登用される状況はよくあるケースです。プレイヤーから管理職への移行はマネジメントの文脈等で多く語られていますが、今回は指導者と学習者という視点で考えてみたいと思います。錦織選手のインタビューコメントやマイケル・チャン氏の指導者としての発言などを読み解きながら、優秀なプレイヤーが優秀な指導者になるために必要なことについて考察してみましょう。

自分がなり得る最高の選手になるために

錦織選手とマイケル・チャン氏の対談映像を見ていると、マイケル・チャン氏は「自分がなり得る最高の選手になるためには、自分が持っている身体で最大限の能力を発揮し、試合で勝つ方法を見つけること」[1]だと説明をしています。錦織選手は、世界のトッププレイヤーと比べると小柄です。一見弱みのように見えるこの身体的特徴を逆に強みと捉え、活用することが必要だとマイケル・チャン氏は語ります。本人も現役時代は、身体が小さいことを強みと捉え、その強みに磨きをかけるために相当の練習を積み上げたようです。

ここで学ぶべきポイントは2つあります。一つ目は目的と手段の関係です。一つひとつの知識も技術も全て目的を達成するための手段であり、ゴールが明確でなければならないということでしょう。二つ目は自分の武器を磨く大切さです。一見弱みのように見えるものも捉え方を変えれば強みに変わることが見えてきます。指導者として、学習者の本領が発揮できる武器は何なのかを見出し、それを磨く大切さを教えてくれています。

また朝日新聞デジタルの記事[2]の中で、錦織選手のインタビューコメントが掲載されていました。

「僕自身、トップ10に入るための気持ちの持ち方とか伝授してもらうイメージだったけど、指導を受けて、技術面の相当細かいところまで直された。」

「今のところ、ほとんど言い負かされている。押しつけじゃなく、一つひとつ丁寧に論理的に説明してくれるし、実際に言われたとおりに打ってみると納得できることが多い。」

この2つの錦織選手のコメントの中から、マイケル・チャン氏の指導内容が垣間見られます。錦織選手に対して技術面で細かい指導をされており、かつ押しつけではなく、論理的に丁寧に説明していることが想定されます。また「実際に言われたとおりに打ってみると納得できる」とのコメントがあるように、納得度の高い指導であることに加え、すぐに実践に移せるレベルの具体的な指導であることが想像できます。これらを実現するためには、高い言語化能力が求められます。錦織選手が「押しつけではなく」と語っているように、相手が受け入れられるような(押しつけと感じないような)関係性を築いているということでしょう。指導場面において、教えたつもりになっていても、学習者が実践できなければ、教えたのではなく、伝えただけにすぎません。「伝える」と「教える」の境界線には大きな隔たりがありそうですが、それらを乗り越える鍵がこのインタビューからも読み取ることができます。さらに、WOWOW×TBS共同制作ドキュメンタリーのインタビュー[3]の中で、マイケル・チャン氏は以下のように述べています。

「彼はとても成長するでしょうから、そうなるのを待ちましょう。」

指導者マイケル・チャン氏は学習者錦織選手の成長を信じているのです。指導者の視点でみれば、学習者のできていないことにどうしても目が行きがちになります。しかしながら、指導者としての心の持ち方として、学習者の成長を信じることの大切さを改めて感じます。

優秀な指導者になるために

ここまで錦織選手、マイケル・チャン氏の関係から良い指導者になるために何が必要かについて考察しました。キーワードになるのは以下の5点です。

1)ゴールを明確にする(目的と手段の関係を整理する)

2)学習者の強みを見出す(本領発揮できるものを見出す)

3)学習者との信頼関係を構築する

4)指導者は高い言語化能力を持つ

5)学習者の成長を信じる

言葉にしてみると当たり前のように見えることばかりですが、現実には高いハードルです。特に2)については、錦織選手とマイケル・チャン氏は比較的似たタイプであったため、強みを見出すことができたのかもしれません。ビジネス場面では、人によってタイプが異なることが少なくありません。学習者をフラットに見て「本当に本領発揮できるものは何なのか」を見出す洞察力が求められます。また、4)も重要な能力です。私たちはついつい自分の使いやすい言葉を使いがちです。しかしながら指導者は、自分の持っている知識や思考を、学習者の視点に立って「相手が理解できる・納得できる言葉を選んで使っていく」必要があるのです。そのためには、5)にあるように、学習者の成長を信じ、3)学習者との信頼関係を構築しながら、1)ゴールを明確にし、お互いに共有しながら関わっていく必要があります。学習者の視座に立った指導を行える指導者が良い指導者といえるのではないでしょうか。(2014年11月14日記)


〔1〕You tube「錦織、マイケル・チャンからのアドバイス『勝つ方法を見つけること』」(2014年10月30日閲覧)
〔2〕朝日新聞DIGITAL2013年12月26日18:51更新(2014年10月30日閲覧)
〔3〕WOWOW×TBS共同制作ドキュメンタリー(2012年)

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