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現場トップは非常事態に戦術を変える勇気を!~ブラジルW杯ネイマール負傷離脱からの考察~社会動向から世の中を見る

SANNOエグゼクティブマガジン


1. 世界中をクギづけにした2014ブラジルW杯

FIFAワールドカップは、国際サッカー連盟(FIFA)が主催する、ナショナルチームによるサッカーの世界選手権大会である。サッカーの大会の最高峰と位置づけられ、テレビの視聴者数ではオリンピックを凌ぐ世界最大のスポーツイベントである。

2014年ブラジル大会では、賞金総額が約586億4000万円と前回大会より37%の増額となり、優勝国約35億6000万円、準優勝国約25億5000万円、3位約22億4000万円、4位約20億4000万円と上位の国への賞金は軒並み増額、グループステージで敗退した国に対する賞金約8億1000万円は据え置かれたが、賞金とは別に支給される準備金については約1億5000万円と増額された。まさに、名実とも比較対象のない地球規模でのショータイムである。

2. 開催国ブラジルの悲願と悲劇(スーパースター、ネイマールの活躍と腰椎骨折離脱)

開催国として優勝を義務づけられたブラジルは、グループリーグをネイマールの活躍もあり1位通過したものの、ベスト8を賭けたチリ戦で辛くもPK勝ち後、悪夢の前夜といえる準々決勝コロンビア戦を迎えた。今大会のスーパースター、ネイマール以外得点の香りがしないセレソン(ブラジル代表の愛称、ポルトガル語で“選抜”を意味する)は、両センターバックのセットプレーからの得点で、何とか準決勝進出を果たした。しかし、チアゴ・シウバ主将の出場停止、試合終了間際のネイマール負傷退場(腰椎骨折による戦線離脱)というあまりにも大きな代償を払うこととなった。魂(主将チアゴ・シウバ)と羽(ネイマール)をむしりとられたセレソンは、準決勝でドイツに1-7の惨敗。3位決定戦でもオランダに0-3の完敗。まさに、サッカー王国の崩壊とも思える惨状となった。

2014年ブラジル大会は、優勝したドイツの美しいパスサッカーや稀代の天才メッシ率いる堅守のアルゼンチン、スペクタクルなサッカーを展開したオランダなど見所満載な大会だったが、ホスト国ブラジルの負った傷は相当深かった。

3. 打ち手はなかったのか

1) 屈辱の1-7は必然か

サッカーの敗因を考えたらきりがない。準決勝のセレソンも魂と羽の不在、ホスト国としての重圧、若手特有のメンタリティーの弱さ、過去成功したフォーメーションへの固執などいくらでもあげられる。しかし、データを掘り下げていくと1-7と惨敗した結果との相関が説明できる。(表1、表2は、前半0-5の試合運びからの分析結果) このデータ分析から1-7というスコアの必然性が見えてくる。

ブラジル ドイツ パスワーク ボール回遊率

    1. ボール回遊率: ブラジル7人(70%) vs ドイツ8人(85%)
    → ドイツアタッカー陣の1人ひとりがさまざまなエリアに顔を出してパス交換に貢献した。つまり、アタッキングエリアのスペースを複数の選手が制していた。 
    ドイツアタッカー陣の1人ひとりの流動性の高さが奇襲攻撃を次々と成功させた。つまり、複数のアタッカーでゴールマウスをこじあけた。

    2. 流動性を支える運動量: ブラジル42,682m vs ドイツ47,832m(ドイツが約12%多い)
    → 流動性と関連したFIFAの運動量データ(90分)から見えてきたことは、ドイツアタッカー陣1人ひとりの運動量の多さが攻守のバランスを支えたことだ。全員攻撃、全員守備の運動量を保持していたのだ。(データ出所:FIFA.com)
    つまり、ドイツは戦う前に魂と羽の抜けたセレソンのメンタリティー、フォーメーション、戦術、フィジカルコンディション、入れ替え選手の力量を読み切り、自チームの強みであるパスワーク、流動性、運動量を最大限に活かし、アウェーの不利を克服し、前半で圧倒したことがデータから読み取れた。

    2) ネイマール不在時のリスク管理はなかったのか

    コンフェデ杯優勝時の戦術にしがみついたルイス・フェリペ・スコラーリ監督の責任は重い。しかし、非常事態に現場トップとしてやることはやったと思う。ネイマールショックを緩和し、チームを鼓舞し、奇跡を信じさせ、再度戦う集団にまとめていった。しかし、残念ながら今回のブラジル代表は、やはりネイマール依存型のチーム戦術を変えられなかった。奇跡は起こらなかった。

    では、現場トップとして何が足りなかったのか。それは、「想定外を想定したリスクマネジメント」に尽きる。おそらく戦前ネイマール不在、主将不在は想定していたはずだ。そして、その際のフォーメーションや選手起用も考えて、想定訓練もしていた。しかし、有事の時に全く機能しなかった。つまり、砂上の楼閣、絵に描いた餅だったのである。

    非常事態に必要だったのは、相手分析と戦術の変更だったはずだ。統制のとれたパスサッカーをするドイツに対して、ネイマールがいないセレソンのアタッカーは、フレッジやフッキ、ベルナルジではなかったはず。いずれの選手も点取り屋ではなく、チャンスメーカーだった。また、チアゴ・シウバ主将代行はダビド・ルイスではないだろう。非常事態の主将としてはメンタルが弱すぎた(あらゆる場面で泣いていた。ジーコ、ドゥンガ、カフーがいたら怒鳴られていたはずだ)。主将は消去法でGKジュリオ・セザール。なぜなら経験知が誰よりもあったからだ。

    つまり、非常事態の現場トップは、相手分析の結果から想定できるフォーメーションと選手の変更、さらに限られた時間の中でのダイナミックな戦術変更を徹底させ、セレソンの魂や羽を失った集団を全く異なるフォーメーションと戦術を持った集団へと変態させねばならなかった。そのための思考と勇気が現場トップに欠けていた。

    4. 現場トップは非常事態には戦術を変える勇気を!

    1) 唯一絶対者の代役はいない

    企業現場で、業績V字回復のコンサルティングに関わると、今回のブラジルで起きたような出来事に遭遇することがある。「○○がいればなんとかなったはずだ」「戦略がしっかりしていればここまで酷くならなかった」「窮地は誰かが何とかしてくれるはずだ」「次世代エースの登場を待つ」、、、、よく耳にする負け戦の台詞だ。

    いずれのケースもブラジルが味わった結果が待っている。勝利の女神は、「変化こそ存在」と信じる者のみに微笑む。常に想定外は起きるし、特定の人材(戦略)に頼りすぎると集団は思考停止状態に陥る。さらに欠かすことのできない唯一絶対者が離脱すると、集団は機能不全に陥る。唯一絶対者の代役はいないのだ。

    その場合は、現場トップはどう行動すべきか、道は1つしかない。「勇気を持って戦術を変えること」。ブラジルの現場トップは、離脱した唯一絶対者から離脱できない者だった。

    2) 徹底的な自己分析と相手分析

    ドイツは戦う前にブラジルを徹底的に分析して丸裸にし、自チームの強みであるパスワーク、流動性、運動量を最大限に活かし、アウェーの不利を克服し、前半で勝負を決めた。

    企業においても全く同じことが起きている。アジア新興国でドイツ企業(自動車産業)と競合すると、自社の利益の最大化をしっかり見極め、強み(製品やシステム)を武器に、顧客、競合を徹底的に分析し、現場に権限委譲し、アウェーで絶妙なQCDで顧客を攻め落とし、自社グループ包囲網を作り上げていく。したたかで、手ごわい。もちろん、ドイツだけでなく、欧米の優良企業は同様の特性を持っている。

    では、われわれは、どう立ち向かえばいいのか。答えはブラジルが取るべきだった方法にヒントがある。それは、勝利は、「変化こそ存在」と信じる現場トップが「勇気を持って戦術を変えること」だろう。当事者たちが現場で再度相手分析、自己分析を徹底的に行い、有限のリソースの中で戦術を組み立て直し、突破口を見つけたら全リソースを使い、心を1つにして総攻撃をかけることに尽きる。攻撃こそ最大の防御であり、相手が最も嫌がる行為である。

    グローバルで戦う企業戦士には、ワールドカップで垣間見えた現場トップのあるべき姿「非常事態には戦術を変える勇気を!」を教訓とした、アウェーで勝ち切れる活躍を期待したい。


    参照先URL(2014年7月27日閲覧)

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