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「日中韓3か国企業調査」から考える「女性活躍」の今とこれから 後編(2/2)【第7回 企業と社会、そして人~『これからの経営』を考える~】

後編 「日中韓3か国企業調査」から考える「女性活躍」の今とこれから
~自由が丘産能短期大学 石塚浩美教授に聞く~

本橋

先のGGGIの結果などを見ていると日本は問題ばかりのようにも見えますが、逆に、先生の調査から、日本(企業)の優れた点、世界に誇れてもっと伸ばせると効果的な点はないのでしょうか。

    石塚

    日本では、制度が充実しており、制度面での整備は進んでいるといっていいと思います。育児休業制度や介護休業制度、フレックスタイム制などですね。企業の規模にもよりますが、一定以上の規模の企業の正社員であればそうした制度を使うことができるようになっています。これらも整備が進んできたのは1980年代からですが、現在では世界の中でも「制度」は非常に充実した状態にあると言っていいでしょう。

      本橋

      それだけ制度は充実していても、先ほどの「M字グラフ」の右側は非正規での労働が多いということでした。
      つまり、制度は整っているが、出産・育児を機に多くの女性は一度仕事を辞めてしまう、ということです。これは、なぜなのでしょうか。

        石塚

        私が担当している授業で学生に聞いたり、アンケートをとったりしても、女子学生で「出産・育児の際には仕事は辞めたい」と答える人は結構多いです。
        もちろん、「続けたい」と希望する人もいますが。
        また、男子学生も、一般論はともかく自分自身のことになると、配偶者には仕事を辞めて育児や子育てのことに専念してほしいと希望する人もいます。
        自分自身、あるいは配偶者が、大変な思いをしてまで「仕事と子育ての両立」をしたくはないと。若い方も、意外に保守的です。学生でまだ社会経験をしているわけではないので、イメージで語っている部分はあるかと思いますが、女性も男性も両方とも若い頃からこうした価値観をもっていて、社会に出て結婚し出産・育児というステージに入るので、制度は充実しているけれども利用されない、女性が「辞めずに働き続ける」ことにはつながっていない、ということになるのかもしれません。

          石塚

          私は若い世代が、十分な知識のないまま漠然とした考えや価値観で就業への選択をしてしまって、後で後悔するようなことになるのを非常に懸念しています。
          ご存知のように今の日本社会では、新卒時に正社員として就職したという経験がないと、後で再就職しようとしても非常に厳しいことになる。女性の場合はなおさらです。その結果、幾度か訪れる「就業の選択」の場面での判断が、生涯賃金に大きな差をもたらすことになってしまいます。

          そこで私は、学生への授業の中で、表(図表2)を用いながら「ワークのお値段」に関する話をします。
          これは『国民生活白書』のデータに私が加筆して作成したもので、「生涯ずっと正社員」「正社員として就職し、出産を機に一度辞めて、後に正社員として再就職する」といった女性が選択することの多い4つのパターンの生涯賃金を算出したものです。
          そして、こうした現実を「事実」として知ったうえで、自身の判断として後悔しない選択をしてほしいと伝えています。女子学生だけでなく男子学生にもです。女性の就業選択に配偶者の考え方や意見はとても大きく作用しますから。

            図表2 「ワーク」の違いによる「お値段」としての生涯賃金

            出所:経済企画庁『国民生活白書』(1997年版)
            注:(4)の「ワーク」は、他の「ワーク」の計算に基づき、石塚教授により計算。

            石塚

            できればもっと早い段階、中学や高校の学校教育で、こうしたデータなども示しながら生徒に考えさせる場を持つことが望ましいと思います。
            一人ひとりが生涯を通じたキャリア形成や「ワーク・ライフ・バランス」を自ら納得して選択できるように、結婚した際には家庭内の役割分担も含めて「お互いが、生涯どう働いていくのか」を話し合えるように、十代のうちから知識を得て、考える経験を持つことは重要です。

              本橋

              生涯賃金だけが判断の材料ではないとしても、より適切な意思決定には情報が必要なことは確かですから、こうしたことを「知識」として提供することは大切ですね。
              それを知ったうえでどのような選択をしていくのかは、まさに本人(たち)の価値観の問題になるわけで、「納得して、自ら選択する」ことが重要なのだと思います。
              就業の選択は人生の選択でもありますから、中学や高校の時期にそうした教育場面をもつことは、少し大袈裟に言えば生き方の選択のための価値観を養う、という意味でも貴重だと思います。

              さて、教員として、先生が学生に接する際に大切にしていることや、本学の学生に感じることなどをお聞かせいただけますか。

                石塚

                私は、学生さんにできるだけ声をかけること、なるべく双方向のコミュニケーションをとることを意識しています。
                私は非常勤で他の大学でも教えていますが、本学の学生はコミュニケーション能力が非常に高くて、積極的な方が多いと思っています。

                  経営学も経済学も同じ社会科学ですが、本学は女子学生の割合も高く、男女問わず自分から動く学生が多い。
                  職種でいえば、たとえば接客業や営業職、また起業などに向いていると思います。コミュニケーション能力が高くて、話が上手い、創意工夫ということにも長けていますから。先日も、ある女子学生が「私にはアイデアがたくさんあって、これを活かした事業をやってみたい」と相談に来ました。

                    自由が丘産能短期大学 石塚浩美教授

                    石塚

                    彼女の資質も私は概ね理解していましたから、「まずは、やってみたら」と、そしていくつかの、私の持っている多様なネットワークの話や、知人や有名人の事例等を紹介し、アドバイスを差し上げたのですが、彼女はそれを現実のものにしていくのではないかと本当に期待しています。

                    また、資格をとろうとする学生が多いのも特徴的で、サービス接遇検定を受けたり、秘書検定にもチャレンジしようかという男子学生がいたりします。
                    これからも彼ら彼女らが、社会に出て活躍していくことを支援し、応援していきたいと思います。

                      (了)

                      石塚 浩美(いしづか・ひろみ)
                      自由が丘産能短期大学教授。東京都立大学(現・首都大学東京)大学院社会科学研究科経済政策専攻博士課程修了。社会科学博士(お茶の水女子大学大学院)、経済学修士。
                      専門分野・主な研究領域は、労働経済学、男女の就業と経済・社会システムの実証分析、ワーク・ライフ・バランス、ダイバーシティ。
                      主な著作に『中国労働市場のジェンダー分析 -経済・社会システムからみる都市部就業者-』(勁草書房、2010年)「二重労働市場論に基づく若年層の新しい初期キャリア形成の提示」(『産能短期大学紀要』第45号、2012年)など。

                      (学校法人産業能率大学 総合研究所 本橋 潤子)

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