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非営利組織から企業を視る(2/2)【第4回 企業と社会、そして人~『これからの経営』を考える~】

後編「社会的企業」と「営利企業」の新たな関係、そして若者への期待
~産業能率大学経営学部 中島智人准教授に聞く~

前編では、「非営利の組織」と「営利企業」や「行政・自治体」との対比を中心に、「社会的企業」について産業能率大学経営学部の中島智人先生にお話を伺いました。
後編では、「支援や寄付」を超えた営利企業と非営利企業の関係、そして本学の学生教育からみる若者への期待についてお話を伺います。

本橋

先ほど東日本大震災のお話がありましたが、近年、こうした災害などもきっかけにして、「市民」としての意識をもつことや、そこでの責任を考えるといった機運が生まれてきているように感じています。先生は、この10年ほどの日本の変化をどのようにご覧になっているのでしょうか。

    中島

    1998年に特定非営利活動促進法ができましたが、この法律の制定を直接後押ししたのは1995年に発生した阪神淡路大震災だったと言われています。ただし、1990年代から、市民活動や、「市民のための法律は作らなければいけない」という議論はずっとされていました。
    したがって、「1995年阪神淡路大震災をきっかけとして、1998年の特定非営利法人活動促進法ができた」というのはいささか言い過ぎで、「それが最終的な後押しをした」と見るのが適切でしょう。ずっと議論をしてきた中で、阪神淡路大震災という未曾有の、多くの人が経験したことのない大災害が発生して、ボランタリーな活動、国や企業ではない者の活動というものが私たちの社会には根強くあることが改めて認識され、それを支援しなければいけないという機運が高まったんです。

    この震災の以前から、たとえば介護の問題でも、ボランタリーな活動というものはありました。
    介護保険ができたのは2000年でしたが、それまでは、在宅のサービスは草の根で行われていたんです。社会福祉法人というのは古い法律に基づいた法人で、簡単にはなれないんです。しかも、なったらなったで勝手な活動はできない。
    昔は「措置」といって、法律に基づいたサービスしか提供できませんでした。しかしそういう形態ではなく、住民主体による、在宅での、今でいう介護保険のサービスみたいなものも、1980年代から徐々に盛り上がっていたんですね。市民自らが自分たちの課題を解決すると。
    ただ、そういう活動を行っている団体に根拠を与える法律が、それまでなかったんです。それが、「特定非営利活動促進法」として、1998年12月に施行されたわけです。


      それでも、「特定非営利活動促進法」が施行された当時は、おそらく、「市民活動」は特別な人たちがやるものだったと思います。
      その当時と比べて現在では、自分たちで団体を立ち上げるといったイニシアチブが増えていると感じています。

        産業能率大学経営学部 中島智人准教授/産業能率大学総合研修所 本橋潤子

        阪神淡路大震災のときは、ボランティアというと、ボランティアをする人と、それを受ける人という関係が比較的単純だったと思います。
        しかし現在では、たとえば東日本大震災にしても、いまだに解決されていない課題が多く、外からボランティアに行く人が減っている中で、「自分たちで課題を解決する」という意識をもつ人々がまずあって、その「自分たちで解決しようとする取り組みを支援する」といった支援の仕方に変わってきている気がします。

          本橋

          ここで、先生の学生教育、ゼミの活動などについてお伺いしたいのですが、一昨年、東日本大震災が発生したとき、先生のゼミではどのような活動をされたのでしょうか。

            中島

            そのときは、何回かに分けて行きました。最初のときはたまたま、大型トラックの運転が出来る学生がいましたので、その学生と2人で3月の後半、地震発生から2週間後ぐらいに支援物資を届けに行ったりしました。

            私自身も以前から個人的にNPOの活動はしていましたので、NPOの知り合いは現地にいるわけです。そこで、茨城県の水戸で支援物資を集めたのを、福島県のいわき市に運んで、という活動をしました。私たちがゼミで活動したのはいわき市が中心だったんですが、その理由は、日帰りができるからです。朝すごく早くでかければ帰ってこられるというのは重要でした。

            学生教育という観点からお話しすると、もちろん、その一環としてボランティア活動をするというのも重要なんですが、本学は『建学の精神』にもありますようにマネジメントを重視していますので、マネジメントの応用の可能性を考え実行するということを、私はとても大切に考えています。

            たとえば、普段お付き合いしているのは、NPOであったり社会的企業であったり、たとえば福祉やまちづくりなどの、あまりお金儲けとは関係のないところが多いですのですが、こうした団体にもマネジメントは重要です。マネジメントというのはお金儲けのためにあるわけではなくて、何か団体があって、その団体の目的を効率的、効果的に達成するためにどうしたらいいかを考えることです。
            ですから、たとえば地域のマネジメントであったり、自治体のマネジメントであったり、NPOのマネジメントであったり、そういういろいろなところで「マネジメント」の概念は適用されうるものなのです。しかし残念ながら、マネジメントの勉強は、たとえば経営学部や商学部といった、主に営利企業を対象にしている学部の出身者がしている場合がほとんどです。

            私が、いろいろな団体の活動に本学や私のゼミの学生も関わらせてもらっているのは、マネジメントを勉強した者として、その団体なりNPOなりが掲げている目標を達成するために、自分たちが学んでいることがどう活かされるのかをぜひ学生に学んでほしいからです。
            マーケティングでもいいし、普段培っているプレゼンテーションの能力、コミュニケーションの能力でもいい。
            そういうものを、自分たちが普段接しない人々、学生の仲間内ではない社会の中で発揮をしてほしい。これは学生にとっても非常にいい経験になりますし、社会的企業やNPOの方々も、本学の学生の能力を非常に高く評価してくださいます。
            やや手前味噌ですが、本当に評判がよくて、ありがたいことです。普段学内で鍛えられていることを、私たちや学生の仲間内ではない知らない人の前で、きちんと実際に発揮することができる。こういうことは、学生にとってすごく貴重なことなんですね。私は、そういう場をいろいろと提供していきたいと思っています。

              本橋

              「実際に発揮する」、在学中にそういう場が得られることは、とても貴重なことだと思います。

                中島

                以前、神奈川県のある団体が行っている、福島県の高校生に神奈川県内でのインターンシップの機会を提供する活動の支援を、私のゼミの学生が中心になってやってくれたことがありました。
                インターンシップは企業でやってくるんですが、高校生がそこから帰ってきたときに、たとえばそれをまとめたりとか、成果発表をしたり、疲れているのでレクリエーションをしたりとか、そうした企画も含めてボランティア活動を行ったのです。福島の高校生が神奈川に来てやっているのですから、なかなか、言いたいことも言えなかったりするのですが、そういうのを上手く引き出したり、打ち解けさせたりとかするのを、とても上手くやっていて感心しました。

                  本橋

                  特に最近の学生は、パワーポイントの作り方やプレゼンテーションの仕方などに長けていて、上手いですよね。

                    中島

                    本当にそう思います。私のゼミは都内や関西の大学などと合同ゼミもやっているんですが、中でも本学の学生のプレゼンテーションは本当に上手です。
                    また、神奈川県内に起業家を支援する公益財団法人がありまして、そこに学生起業家に奨学金を付与するプログラムがあるのですが、私はその審査員をやっています。

                    この奨学金の審査では、「自分で起業する」「責任を持って起業する」学生を非常に高く評価することが特徴的です。
                    本学の学生の中からも、勉強したことを活かして、こうした機会をとらえて、「自分で起業する」人が出てきてほしいと期待しています。奨学金をもらいながら、ビジネスプランを作ることができますし、非常に向いている活動だと思います。

                      そうした場で、「活きたマネジメント」が実践されるといいですね。

                        中島

                        たとえば経営学部には、コンテンツビジネスの一環で、スマートフォンのアプリを作ったりしている学生もいますので、そうしたアプリを作るだけでなく、それをビジネスとして立ち上げて、こうした財団の奨学金などが活かされると面白いなあ、と思っています。

                        この奨学金プログラムは、社会起業家だけを対象にしているのではないのですが、最近、社会起業家がとても増えている、社会的な課題をビジネスの力で解決したい、という応募がとても増えています。

                        学生にとって、社会的な課題を解決するビジネスモデルというのは、本来的には儲からないんです。でも、何か工夫をすることによって、持続可能な事業体として作り上げることは、現在の企業の変化や消費者の変化、もちろん市民の変化というのをふまえると、あながち、夢物語ではない、可能になってきているんです。
                        そういうところで、何か新しいビジネスモデルを作ってくれると、いいなあと思っています。本学の学生にはそうした、社会を変える取り組みに挑戦してほしいし、それを実現できる力を十分に持っていると思います。



                          産業能率大学経営学部准教授。国際経営学修士、
                          MSc in Voluntary Sector Organisations。

                          主な研究領域は、非営利企業論、市民社会政策論。実務経験後の4年間のイギリス留学で得られた知見をもとに、実践的な学生教育を行いながら、休日には自らもまた、社会的課題解決のためのNPO活動に従事している。

                            産業能率大学経営学部 准教授 中島 智人(なかじまともひと)

                            産業能率大学経営学部 准教授 中島 智人(なかじまともひと)


                            (学校法人産業能率大学 総合研究所 本橋 潤子)

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